闇狂屋
藍無
第1話 闇狂屋
『ねえねえこれ、知ってる?』
スマホにネットの友達(?)から通知が来た。
そのメッセージの下には、URLが貼ってある。
そして、その次の通知には、
『このURL、押した人はみーんな、行方不明になっちゃうんだってさ。』
なんだそれは。
怪しさ満点ではないか。
現代でそんな化学証明できないことはあり得ない。
でも、それがもし本当なんだとしたら、私は消えたいかもしれない。
疲れたんだ。
今まで、推しのために、推しのことだけを考えて生活してきた。
でも、推しはアニメキャラ。
所詮はこの世界には存在しないものだ。
そう思うと、なんだか推しへの愛がさあっと、冷めていく感じがしたんだ。
現実世界での、3次元での推しもいるけれど、星のような存在で、どんなに頑張って手を伸ばしても、届きやしない。
現実世界で、友達もいないし。
ネット上の友達なんて、現実世界であったら即ブロックされるほどの縁。
数年前までは、人の顔色うかがっていつ嫌われてしまうのかびくびくしながら生きていたけど、数か月前にそこまでして保つ友情に意味なんてあるのか?とか思って、本当に思っていることを言ってみたら、友達やめよう、って言われた。
本当に、疲れたんだ。
この間まで、学校で成績のために優等生演じていたけれど、そこまでしてつかみ取った成績に価値なんて本当にあるのか?って、疑ってみたら、分からなくなってきたんだ。
何も、わからなくなったんだ。
何も。
もういいよ。
だからもういいんだ。
消えてしまおう。
この嘘みたいなURLがもしも本当だったのなら、消えることができるのだから。
そう思い、私はURLをクリックした。
すると、
「およびかね?」
という、声が背後からした。
女の人とも男の人ともわからない中性的な声だった。
振り返ると、紺色のパーカーを着た、瞳の中に雪と花が入っている不思議な瞳をした中性的な見た目の者がいた。
「あなたは、今私がクリックしたURLと何か関係がありますか?」
私は、そう尋ねた。
「そうだよお、君が今クリックしたのは、闇狂屋のURLだよぉ。そのURLをクリックしたということは何か、叶えたい闇願望があるようだね。」
「闇願望?」
「ああ、そうだよ。闇側の言葉、破滅、消滅、死、そういったことを望む行為、それが闇願望だよ。」
闇願望、か。
「で、あんたの闇願望はなんだい?教えてくれたら叶えてやろう。」
本当に、かなえてくれるのだろうか。
「私の、望みは、闇願望は、消えること。」
「へえ、そうかい。じゃあ、呟いてごらん。君の願いを、この人形の手を握って。」
その者は、そう言って人形を差し出してきた。
それはとても美しい人形だった。
「私の願いは消えること。」
私がそう言うと、その者は、
『おちるにおちない。
染まるに染まらない。
なにものにもなれない、何かになろうとあがいても。
あなたの願いは、消えること。
私があなたを消してあげる。
私があなたの願いをかなえてあげる。
闇狂屋が、消してあげる。』
と、歌いだした。
そして、私の意識はそこで途絶えた。
―――――
真っ暗な空間に、人形と私がいる。
人形は、私のほうへ歩み寄ってくる。
私は体を動かそうとするが、体が一ミリも動かない。
嘘でしょ?
私、本当に、消えちゃうのかな?
人形はゆっくりと歩いてきて、私によじ登り、私の首を小さな手でにぎり、締めた。
「あぁっ、嫌、ぐっ、がはっ、、、、」
かく、とその場に少女は倒れた。
「良かったね。ご主人様は優しいから、あなたの願いをかなえてくれた。良かったね。」
今はもう動かなくなっている少女に、人形はそう語りかけた。
「ああ、もう聞こえないのか。ばいばい。」
人形はそう言って、手を振って帰っていった。どこかへと。
――――――
「ご主人様、この子消えたよ。ちゃんと。死体も残らず消えたよ。苦しみながら、苦しむことを、消えることを最後はちゃんと嫌がりながら。」
「そうかい、この世でいう行方不明、というやつにさっきの子はなったね。それにしても、消えることが苦しくないとでも思ったのかな。この子。」
「さあ、どうだろう。でもご主人様、他の子が抱えている闇願望を叶えに行こう。」
「ああ、そうだね。ほかにもこの世界には闇を抱えた子たちはいっぱいいるから。叶えてあげなくちゃ。」
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