テーマ2「こたつ」

早稲の蜜柑を剝きながら

香り立つ皮の内側に、ほわほわと巡る雪の色を見る

師走の街の喧騒は遠く

ただ猫の欠伸につられる昼下がり


いつの間にか地面を覆った白いベールを

分厚い窓の内側から眺める

少し熟れた早稲の蜜柑を剥きながら

一人夕餉の献立を組む


とっぷりと早い日が暮れて

すっかり冷えた背中をさする

もういくつ眠ると……

年の瀬の慌ただしさを思うが

ゆっくりと口に蜜柑を運んだ


足元だけがやけにぬくい

重たい毛布をそっとめくれば

冬の空気を嫌がって顔を背ける

まんまるな猫が一匹


名残惜しさは猫に預けて

一人寒さに負けじと台所に立つ

夕餉の鍋を仕込むために

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る