逆転異世界の腕時計

@hiroyuki531

逆転

逆転異世界の腕時計

朝起きてスマートフォンを見るとグループチャットの招待があった。「とりあえず入ってみるか、イヤならすぐ抜ければいいし」

「えーと、どれどれ?皆さん初めましてっと」

メンバーの数は自分を入れて6人だった。

すぐ1分以内にメンバーの1人からコメントがきた。「は~い!待ってました?私たちのこと覚えてる?」

全く記憶になかった。私の名前は蒼井司、30歳会社員、仕事は中小企業の事務、マンションで1人暮らし。独身のつまらない男だ。

「覚えてないです、知りません」

その返事からまたすぐ1分以内に同じメンバーからコメントがきた。

「酷いぃいい!私たちみんな司の幼なじみだよ!しかも司以外のメンバーはみんな女性です!今どんな生活してるの?明日の日曜日にみんなで同窓会しよ!場所と時間はまた連絡するからよろしく!」

意味が分からなかった。さすがに30にもなって幼なじみが5人いて、いきなり同窓会なんて。

これは間違いなく犯罪や詐欺の予感しかしない。

「あ、結構です。参加しません。」

「来なかったら明日迎えに行くからね。」

残りのメンバー5人が同じ返事をした。

今日が土曜日でいきなり明日か。怪しい。

気味が悪いのですぐにグループは退会した。

大丈夫、実家とも絶縁したし住所や個人情報は誰にも教えていない。何故なら1人が楽だし好きだから。もう出来るだけ誰も傷つけたくないし、傷つきたくもない。「大丈夫、もう1人の自分で大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせて、静かに夜を迎えた。

翌朝6時に目が覚めた。やっぱり大丈夫か。

そう思った瞬間にインターホンが鳴った。

「マジかよ、こんなに朝早くに…はい二度寝しよう」

また連続で3回鳴ったが無視を続けていたら、インターホンは鳴らなくなった。

その瞬間、ベランダと玄関のドアから「カチャカチャ、コンコンバキッ」と部屋に音が同時に鳴り響く。

「ヤバい!110番!逃げ場がない!」

電光石火のように気付いたら布団の上で1人の女性に関節技を決められ、残りの4人の女性が自分を見下ろしていた。

「あ、俺死んだ」心の声が聞こえた。

「い、命だけはお願いします、お金は払います、助けて!」とっさに出た言葉だった。

すると関節技を決めていた女性が技を外してくれた。その人は赤髪のロングヘアで、まるでモデルのような見た目で普通の私服姿だった。

「だから迎えに行くって言ったじゃない」と微笑んでいた。残りの4人もみんな女性で同じ様な態度だった。

一人はかなり低身長の黒髪の女の子、色鮮やかな緑の髪のキレイな人、寡黙でシルバーカラーの髪の女の子、髪の青くて強気そうな人と、そして最後に関節技を決めていた女性で5人とも私服姿で、アイドルや女優のような見た目で驚いた。

リーダー的に見える赤髪の女性が「やっとみんな思い出してくれた!?」と話してきたが、

「ごめんなさい、正直に言うと思い出せないです。というか身長とか髪の色の違いぐらいしか…」すかさず青髪の女性にヘッドロックを決められた。「お前!私らを思い出せやー!」ここでさらにシルバーカラーの女の子が技を外してくれた。「し、死ぬかと思った…」と呟いた。

やっぱり思い出せない。本人たちに直接名前を聞いてみようと思った。「すみません、みんな本当に思い出せなくて、一番簡単なのは名前を教えてくれた方が逆に助かるんですが教えてくれませんか?」と聞いた瞬間に部屋が静まり返った。

体感的に5分くらいだろうか、何か重たい空気だった。リーダー的な赤髪の女性が「やっぱりダメみたいね」と悲しそうな目で呟いた。何故か自分の心も痛みを感じた。

黒髪の女の子が「私たちから名前は言えないんです、何故なら…」すかさず、赤髪の女性が話を遮って「じゃあとりあえず髪の色の名前で呼んでもらおうかしら、レッド、ブラック、グリーン、シルバー、ブルーで。みんなそれでいい?」

4人とも黙って頷いた。

気まずい空気だったので「何か色で区別って戦隊シリーズみたいでおもしろ…」また体が痛くなりそうな雰囲気になったので、大人しく黙ることにした。

レッドが「次そのセリフ言ったら…分かるわよね…?」

「あ、はい了解しました」反射的に出た言葉だった。グリーンの女性が話し始めた。

「この髪の毛の色は実は理由があるんです、今度は私たちが……」ブラックは「異世…」

 グリーンとブラックは泣きそうになっていた。また自分の胸が痛くなった。

「はいみんなストップ!」レッドが場を落ち着かせた。でも何かこの5人を見ていると懐かしいような、悲しいような適切な表現が出来なかった。

何か変わったことはないかと5人から聞かれた。

話は逸れるが、約10年間自分がうつ病で現在も治療を続けていること、毎日悪夢を見ることや今まで結構年齢的には珍しい病気になったことなどをみんなに話した。それぞれ悲しい表情をしていた。私は「でもまあ治ってる病気も多いし、現代の医療の進歩はすごいよね!かなり症状も緩和されてきたし、お医者さんってやっぱりすごいよね!っていうかその…ベランダと玄関は弁償してもらえますかね…ははは笑」

とにかく場の雰囲気を変えようと思って出た言葉だった。その時だった。胸の痛みが急激に強くなってきた。

ブルー「あかん、干渉し過ぎや!」

グリーンか「回復!」ベランダと玄関が治っていくのが見えた。体もふわふわと軽く感じた。

グリーン「ダメです!回復魔法も!」 

シルバー「脈拍、心拍数ともに危険だよ!」

ブラック「お兄ちゃん!起きて!死なないで!」

レッド「仕方がないみたいね、グリーン、腕時計を渡して」

何……これ、腕時計?スマートウォッチ?みたことない形だ。眠たくなってきた…

レッド「仕方がないわ、みんな再転生と逆転生の準備を!時間がない!」

ブルー「アホか!再転生ちゃうの?」

ブラック「1日しか時間がなかったから…」

グリーン「私とシルバーさんはレッドさんの考えに気付いてましたよ」

シルバー「はい、おそらくこうなるかと」

ブルー「どういうことなん?司をこっちの世界でもう一回蘇らせて、あたしらは異世界からこっちの世界に転生するん?」

レッド「その為に司にまた時計を付けた!この時計を使えるのも彼だけだから!私たちが今も生きているのは司のおかげなんだから!」

ブラック「やっぱり司お兄ちゃんには私たちの記憶がないんだね…」

何を言っているんだこの女性戦隊たちは…

「リバース!」

5人の声を同時に聞いてから私は意識を失った…

「うわっ!!また夢か…」部屋の時計を見たら午前6時だった。二度寝しようと思っていた矢先だった。「あれ?ダブルベッドなのに寝返りが出来ない、狭い!」

「イヤほんまに大変やったで」

「お兄ちゃんどこ?」

「成功しましたね」

「危なかったです」

「こっちの世界はどんな世界?」

「って、あなたたち誰ですかぁあああ!!!」

夢じゃなかったみたいです。 

 

 


 

 


 

    

   

 

 

  

 

  

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