シャッターチャンスは一度だけ
森康雄
第一章 桜ノ宮女子高等学校
桜ノ宮女子高等学校は、古くから伝統ある女子校として知られています。美しい桜並木に囲まれた校舎は、春になると花びらが舞い、まるで夢の中にいるかのような雰囲気を醸し出します。学校の中では、勉強や部活動に励む生徒たちが毎日忙しく過ごしており、学園祭もその一環として、毎年盛大に行われます。
今年の学園祭も例外ではなく、生徒たちは各クラスや部活動ごとに様々な展示やパフォーマンスを準備していました。特に、フォトクラブは毎年行われる写真展で注目を集めています。今年のテーマは「日常の一瞬」。普段見過ごしてしまうような日常の中に潜む美しさや感動を写真で表現するというものでした。
「今年のテーマ、すごく素敵だね。」
放課後、フォトクラブの部室で集まっていた部員たちは、テーマについて話し合っていました。部長の優子は、窓の外を見ながら微笑んで言いました。
「うん、でも難しいよね。日常って、意外と撮るのが難しいんだよ。」
副部長の宏美が、カメラを手にしながら答えました。彼女はすでに何枚かの写真を撮っていましたが、どれも平凡すぎると感じていました。
「確かに。でも、だからこそ挑戦しがいがあるんじゃないかな。」
優子はやさしく言いながら、机に置かれた写真集を手に取りました。そこには、過去の部員たちが撮影した数々の写真が収められていました。彼女はその中の一枚を指差しながら、続けました。
「この写真、すごくいいよね。日常の中にこんなにドラマチックな瞬間があるなんて、考えもしなかった。」
その写真には、雨上がりの校庭で虹をバックに走る生徒たちの姿が映っていました。まるで絵画のように美しい瞬間を切り取った一枚に、部員たちは感嘆の声を上げました。
「私たちも、こんな写真が撮れるといいね。」
部室の中には、期待と不安が入り混じった空気が漂っていました。しかし、誰もが心の中で「今年こそは」と強く思いながら、学園祭に向けての準備を進めていくのでした。
フォトクラブのメンバーたちがそれぞれのカメラを手に取り、校内のあちこちでシャッターを切る音が響き渡る。日常の中に隠れた特別な瞬間を見つけ出そうと、彼女たちは一生懸命に探していました。
しかし、この時点では、彼女たちがこれから直面する不可解な出来事の数々について、まだ誰も予想していませんでした。桜ノ宮女子高等学校の平穏な日常が、やがて大きく揺さぶられることになるとは…。
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