最弱能力でどれだけ出来るのか?~最底辺能力を授かったので取り合えず最強に会いに行きます~

ののせき

第1話 能力授与式

 小さな町『エッグタウン』


 人口78人の、小さな集落があった。10歳未満の子供は僅か3人。

 この年、漸く10歳を迎える少年が一人、とある儀式に挑む。


 異能力を与える大樹【ハローワー木】


 人は10歳を越えると『ハローワー木』によって【異能力】を授かるという。世界に点在するハローワー木に触れ、より強力な異能力を授かる事が出来ればその町、集落は、国から大きな保護を受ける事が出来る。それだけに、彼への期待はとても大きかった。

 両親が付き添い、その正面をノシノシと腕を振って歩く。


少年【ルータ】


 燃えるような赤い髪の褐色の少年。彼は【冒険者】になる事を強く望み、この日、強い想いで儀式に挑む。


「よぉ。ルータ」


町の青年【グランツ】


 この町に住む、唯一とも言える【戦闘系能力】を得た青年だった。巨大な槌を持つその強靭な肉体で、魔物を叩き潰すという。


「兄ちゃん!!」

「お前も10歳か…。早いもんだねぇ…。昔はうっかり殺しちまったりするかもしれねぇってくらい、弱くて脆くて、触れたもんじゃなかった」


 小さな頭を上から押し潰す勢いで、鷲掴みにして撫でまわした。まだまだ脆く、弱いが、大人になったという確かな感触があるが、彼は泣く事は決してしない。

「行ってこい。お前が大人になるとこ、父さん母さんにしっかり見せて来い」

「うん!!」


 『ハローワー木』は、森に囲まれた町の最奥。横に蔦が伸び、広がる葉が辺りを暗く閉ざす。その麓に、小屋がある。

 二人の気配を感じ取り、現れた老人は、何度も何度も頷いた。

「いよいよですな」


「……はい」


 ハローワー木 管理人 【ロドロ】


 薄暗い木の麓。少年は大樹を見上げ、期待に胸を膨らませる。

「さぁ触れなさい。それで、能力を得る事が出来るだろう」


 小さな集落だ。儀式とはいえ、それほど厳かな事は無い。背中を支えられ、大樹に向かって歩く。そして、その幹に触れると、全身が光り輝いた。

 両親は、その成長に涙した。


 光が落ち着く。だが、身体に異変があるような感じは何も無い。ロドロは「そんなもんだよ」と優しく頷き、更に両親の背中を支えて並ぶ。

「さぁやってごらんなさい。アレを」


 何度も脳内シミュレーションを重ねた。カッコよさの極みみたいなポージングを何度も考えた。この日の為に、旅立つ為に。


 コレは常に、やっぱり絶対、カッコ良くないといけないから。


「【ステータス】!!!」


「おぉ!!」


 かつて、【勇者】と呼ばれた男が居た。ロドロは知っている。その男のコレを。あまりのカッコ良さに世界中が真似したほどだ。その形は、全く違う。だが、そのオーラはまるで、そのものだと思った。


「【オープン】!!!」


 お名前 【ルータ】


 異能力


【覇王の加護】【精霊王の加護】【勇者の加護】【剣星の加護】【ミノムシ界の鬼才】【獣王の加護】【鳳凰の加護】【鬼神の炎】【五大属性の秘奥義】【闇の吸収魔法】【物理ダメージ無効化】【魔法ダメージ無効化】【大爆発魔法】【能力付与】【鑑定】【全能力強化】【光の合成魔法】


 サブ能力

【アイテムボックス】【環境適応】【状態異常無効】


「こ……こ……これは…」


「なんですか…これは…」

「一体…ルータは…」


「……ワシはこれまで、1万人以上の人々の異能力を見てきた…。いや伝えるべきだ。自分でも分かっているだろう。それでもハッキリと、伝えておく」


「………」

「………」


「『最弱』です」


「言われなくても…分かってます…」






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