魔力なし悪役令嬢の「婚約破棄」後は、楽しい魔法と美味しいご飯があふれている。
にのまえ
プロローグ
――あ、これ、好きだった乙女ゲームの世界だ。
この世界が乙女ゲームの世界だと気付いたのは、婚約者候補として王城のバラが咲く庭園で金髪、碧眼、王子のような容姿の男の子、カロール殿下とお会いしたときだ。
「はじめまして、カロール・アンサンテです」
え、カロール・アンサンテ?
その名前はいまハマっている、乙女ゲームのヒーローの名前と同じ?
うそ、ここが乙女ゲームの世界だとしたら私は誰なの? そう思ったとき、庭園にふわりと頬を撫でる風が吹く。
――白銀色の髪? この髪色って、乙女ゲームに一人しかいないじゃない。
「どうしました、ルーチェ嬢?」
「いいえ、はじめましてカロール殿下」
そう、私はルーチェ。この乙女ゲームに出てくる、公爵令嬢で、悪役令嬢のルーチェ・ロジエだ。
どうして私が、悪役令嬢なんかに転生しているの?
ほんのさっきまで推しの新作アニメグッズを買い、帰りのバスの中で、紙袋を抱えてウキウキしていたはずなのに。
……いくら思い出そうとしてもそこから先の記憶がない、ということは、帰りのバスに乗ったあと何かが起こってしまい。ちまたで有名な異世界転生したのかな、と気付いたのは十年前。
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