聖なる夜のサンタの恋
海空
運命の出会い
俺はその日、天使に出会った────
時は遡ること4時間前、
サンタ見習いの俺は、ついにサンタクロースとなった。
「おめでとう
師匠は、サンタクロースとして最後のプレゼントを届けるため、夜の街へと姿を消した。俺も見習い最後の仕事、ソリの留守番をしている。
ここは駅前、巨大ツリーのてっぺん。なぜこんなところかって? ほら、ツリーを見上げてみんないい
彼女は、そんなツリーのそばにいた1人だった。
腰まで伸びた髪と足首まであるロングコート、全身を黒でまとめた彼女は華やかなツリーとは対照的だった。そして彼女はツリーを見上げない。それどころかツリーを背に立っていた。
待ち合わせかな?
1時間、2時間……ついに4時間が過ぎた。それでも彼女はそこにいる。
「君はいったい誰を待っているの?」
俺の声は大人の人間には届かない。わかってる、これはひとりごとだ。
すると彼女は初めてツリーに顔を向けた。
そして間違いなく俺の目を見ている!
身体中に稲妻が走った。これが一目惚れというやつか!?
「う、うおぉぉ、天使だぁぁ!!!」
「あの、降りてきてください」
驚いたことに彼女は普通に声をかけてきた。目の前に降り立っても全然動じない。そして、
「天使? それは違います。私は死神です」
そう言うと、コートのポケットに手を入れ、そこにはどうやっても入るはずのない巨大な鎌をゆっくりと出してきた。
***
「いやぁ、待たせたね三太。眠らないで待ってた子がいて、ついつい話し込んじまったわい♪」
「師匠、長いっすよ~。おかげで彼女と色々話せたからいいっすけど♡」
「んお! 忘れとった! 死神の嬢ちゃん、すまないねぇ、遅れてしまって。約束の時間はたしか22時だったなぁ、4時間も遅刻してしまったわい」
「それに関しては何の問題もありません。こちらも多くの人間を観察出来て楽しかったです。それより最後の仕事、楽しめたようで何よりでした。もう心残りは無いですか?」
「ああ、もう十分じゃよ。ありがとうな。
さて三太よ、次に会う時はお前がわしの師匠になる時じゃな。楽しみにしておるぞ」
「そうっすね、師匠、また会いましょう。あ、行く前に……その、彼女に一言いいっすか?」
「私に?」
「あの、また会えます?」
「……ああ、はい、指名ですね。わかりました。あなたの
「いや、それも嬉しいけどそうじゃなくて……」
「!……嬢ちゃん、三太はあんたを嫁さんにしたいみたいだよ」
「よ、嫁!? いやっ師匠! さすがにそれは気が早いというか……その……」
「嫁、嫌ですか?」
「いや、嫌じゃないです! 出来れば結婚してください! うおっ! あっ、そのっ!」
「はい……では、
一緒に生きて逝きましょう」
聖なる夜に、三太は幸せで重た~い契約を交わしたのでした。
🎄めでたし めでたし🎄
聖なる夜のサンタの恋 海空 @aoiumiaoisora
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