第2話 異世界
目が覚めると、そこは見知らぬ世界だった。
「こ、ここは...?」
遥斗の呟きに、誰も答えられない。6人の足元には、奇妙な魔法陣が描かれていた。
「うわ...」
涼介が周りを見回す。そこは広大な石造りの大広間。天井は高く、壁には見たこともない紋章が飾られている。
「ここ...お城?」
千夏が小さな声で言った。
「冗談じゃないよ...」さくらが顔をしかめる。「どうして私たちがお城にいるのよ」
その時、大輔が叫んだ。
「み、みんな! 見ろ!」
彼が指さす方向には、びっしりと人が並んでいた。しかし──。
「な、なんだ...この格好...」
そこにいたのは、まるでファンタジー小説から飛び出してきたような人々だった。きらびやかな衣装を着た貴族らしき人々、杖を持った魔法使いのような老人たち。
「こ、これって...」
美咲が震える声で言う。
「まさか...異世界!?」
遥斗の言葉に、全員が凍りついた。
しかし、考えている暇はなかった。
「Velkommen, tapre helter!」
老人の一人が、にこやかに語りかけてきた。
「えっ?」
遥斗は混乱する。聞いたこともない言葉だ。
「Nå som dere er her, kan vi endelig bekjempe mørket!」
老人は嬉しそうに続けるが、6人には何を言っているのか全く分からない。
「あの...すみません。何を言ってるか分からないんですけど...」
美咲が丁寧に答えるが、老人は首を傾げるだけだ。
「Hva? Forstår dere ikke vårt språk?」
「あ、言葉が通じないのか...」
大輔が眉をひそめる。
「くそっ、どうすりゃいいんだ...」
涼介が歯噛みする。周りの人々も困惑した様子で、互いに顔を見合わせている。
「ねえ、これってどういうこと?」千夏が不安そうに言う。「私たち、本当に異世界に来ちゃったの?」
「そ、そんなの...」遥斗は頭を抱える。「SFとかファンタジーの世界の話だよ。現実にあるわけない...」
「でも、この状況を他にどう説明すればいいの?」さくらが冷静に指摘する。「明らかに現実世界じゃないわ」
美咲が深呼吸をして、落ち着こうとする。
「とにかく...今は冷静になる必要があるわ。どうやってここに来たのか、どうやって帰れるのか、それを考えないと」
大輔が頷く。「そうだな。まずは状況を把握することから始めよう」
その時、人々の間から一人の男が進み出てきた。長い銀髪を後ろで束ねた、若い魔法使いのような男性だ。
「Hmm... Fremmede fra en annen verden. La meg prøve dette──」
男性が杖を掲げ、呪文のような言葉を唱え始めた。
「な、何をする気だ!?」涼介が身構える。
突然、6人の頭に激しい痛みが走った。
「うっ...」
「痛っ!」
みんなが頭を抱える中、不思議なことが起こる。周りの人々の話す言葉が、徐々に理解できるようになってきたのだ。
「え...? 今の声、理解できた?」
遥斗が驚いて叫ぶ。
「本当だ...言葉が通じる!」
美咲も目を丸くする。
銀髪の魔法使いが微笑む。
「言語理解の魔法です。これで会話ができますね」
「ま、魔法...?」
遥斗は信じられない気持ちだった。しかし、目の前で起こった不思議な現象を否定することはできない。
6人は互いの顔を見合わせた。言葉が通じるようになったことで、状況はより複雑になったように感じる。これから一体何が起こるのか、誰にも分からなかった。
最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜 東雲 寛則 @shinonome12
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