最弱アイテム士は世界を科学する〜最弱の職業と呼ばれ誰にも期待されなかったけれど、気づけば現代知識で異世界の常識を変え無双していました〜
東雲 寛則
第1話 修学旅行と不思議な祠
「はぁ...」
バスの窓に額を押し付けながら、佐倉遥斗は小さなため息をついた。京都への修学旅行。普段なら心躍るはずの2日間の旅も、彼には少し重荷に感じられた。
「遥斗、大丈夫か?」
隣の席から、冷静な声がした。親友の高橋涼介だ。
「涼介...」
遥斗が振り向くと、涼介は穏やかな表情で彼を見ていた。
「修学旅行だぞ。楽しもう」
涼介の言葉に、遥斗は小さく頷いた。
「ねえねえ、男子たち」
前の席から振り返ったのは、鈴木千夏。涼介の彼女だ。
「私たち、同じグループになれて良かったね。これからよろしく!」
千夏の隣から、山田美咲も顔を覗かせた。
「うん、楽しい旅行になるといいね」
美咲の優しい笑顔に、遥斗は思わず目を逸らした。美咲のことが好きだった。でも、涼介の幼馴染でもある彼女に、どう接していいか分からない。
「よし、みんな。グループの確認するぞ」
後ろの席から声をかけてきたのは、中村大輔。クラスの学級委員で、今回のグループリーダーだ。
「俺たち6人で行動するんだから、はぐれないようにな」
大輔の隣に座っていた伊藤さくらも、クールな表情でみんなを見渡した。
「あんたこそ迷子にならないでよ。面倒なんだから」
さくらのツッコミに、みんなで笑う。
「なあ、お前ら」涼介が冷静に言った。「班行動はマジメにやろうぜ。大輔に迷惑かけんなよ」
「さすが涼介、頼りになるね!」千夏が嬉しそうに言う。
遥斗は、みんなの和やかな雰囲気に少し安心した。こうして、6人の修学旅行が始まった。
「うわぁ...すごい」
神社の境内に足を踏み入れた瞬間、美咲が感嘆の声を上げた。
「ここ、平安時代からある神社なんだって」
美咲が説明書きを熱心に読み上げる。遥斗は、その横顔をちらりと見た。
(やっぱり、美咲は可愛いなぁ...)
「ねえ遥斗、これ面白くない?」
突然話しかけられて、遥斗は慌てて視線を逸らした。
「あ、ああ...うん。面白いね」
「この神社、不思議な力があるって言い伝えがあるんだって。どう思う?」
美咲の質問に、遥斗は少し考え込んだ。
「う〜ん、そういうのってただの迷信じゃない? でも、もしかしたら...」
遥斗が言葉を探していると、涼介が静かに近づいてきた。
「おい、二人とも。千夏が何か見つけたらしい」
涼介の言葉に、遥斗と美咲は顔を見合わせた。
「行ってみよう」
美咲の言葉に、遥斗は小さく頷いた。
「ここが噂の場所か...」
大輔が慎重に周りを見回す。神社の奥にある、立ち入り禁止の区域。ここには不思議な祠があるらしい。
「ねえ、行ってみない?」
さくらが、珍しく興奮した様子で言った。
「でも、危なくない?」
千夏が不安そうな顔をする。
「そうだな...」涼介が腕を組んで考え込む。「でも、せっかくだし、ちょっとだけなら」
「大丈夫だって。ほら、行こうよ!」
千夏が涼介の腕を引っ張る。その姿を見て、遥斗は複雑な気持ちになった。
(僕なんかじゃ、美咲を守れないよな...)
「遥斗、どう思う?」
美咲の声に、遥斗は我に返った。
「え? あ、その...」
言葉に詰まる遥斗を見て、涼介が冷静に言った。
「行くなら全員一緒だ。はぐれるなよ」
みんなの期待の目に押されて、遥斗は小さく頷いた。
「う、うん...行こう」
「これが噂の祠か...」
立ち入り禁止区域の奥深くで、6人は古びた祠を見つけた。
「すごい...こんな古い祠が」
美咲が感動した様子で祠を観察する。遥斗も、なんとなく興味が湧いてきた。
「この模様、何か意味があるのかな」
遥斗が祠の表面を観察していると、千夏が声をかけてきた。
「ねえ、写真撮ろうよ!」
「おい、そんなの撮っちゃダメだろ」
涼介が冷静に制止するが、千夏はもうスマホを構えていた。
「いいじゃん、記念に...」
その時だった。
カシャッ!
フラッシュが焚かれた瞬間、祠が突如として輝き始めた。
「な、何!?」
大輔が驚いて叫ぶ。
眩い光が6人を包み込む。
「きゃあっ!」
「ちょ、待て! これは...!?」
パニックに陥る6人。しかし、声を上げる間もなく、光は彼らを飲み込んでいった。
そして──。
目が覚めると、そこは見知らぬ世界。
6人の足元には、奇妙な魔法陣が描かれていた。
「こ、ここは...?」
遥斗の呟きに、誰も答えられなかった。
彼らの冒険は、こうして始まった。
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