【短編】眼鏡転生 〜眼鏡っ子しかいない世界に異世界転生してモテモテ眼鏡っ子ハーレムの予定だったのに親愛度MAXの証が眼鏡を外すことだったぜガッデム!〜
雨蕗空何(あまぶき・くうか)
第1話
「
「眼鏡っ子しかいない世界で眼鏡っ子からモテてモテてモテまくるモテモテ眼鏡っ子ハーレムを作るチート能力だ!」
俺ことネズキは死んだ。ごくごく一般的な若者だった。ただ重度の眼鏡っ子好きというだけの。
死因は焼死だった。コレクションした千体の眼鏡っ子フィギュア(オール度入り眼鏡)のレンズによって部屋に入り込んだ真夏の太陽光がゆがめられ、奇跡の曲率で俺の脳天に収束し、脳が焼き切れた。
悔いはないさ。千の眼鏡っ子、二千のレンズに見つめられて逝けたんだ。こんな幸せな最期があるか。
しかも異世界転生のおまけ付き。新しい世界は全人類が眼鏡をかけ、眼鏡を外すことがパンツを脱ぐより恥ずかしいという世界。なんという理想の世界。
これからこの世界で二度目の人生を迎えて、二度目の最期もまた眼鏡っ子に見つめ殺されるんだ。
俺の桃色眼鏡っ子ライフが、開幕だ!
……そう、思ってたのに。
「勇者ネズキ様。村を救い私の心も救ってくださったあなた様に、私の全てを捧げます。どうか、私の初めてをもらってください……」
「待て! 待てぃ聖女セイソナーノ! なぜ眼鏡に手をかける! まさかおまえ、眼鏡を外そうというのか!? なぜ!?」
「なぜ、って、私が誰に対しても眼鏡を外すふしだらな女だとお思いですか? 親愛なるネズキ様だけに捧げるんです! 今まで誰に対しても眼鏡を外したことはありません! 正真正銘の
「
この世界では眼鏡を外すことがパンツを脱ぐより恥ずかしいこととされる。
つまりその倫理観では……眼鏡を外すことが、みずからの純潔を捧げるがごとき最大の親愛の表現、であると……!?
「ガッデム! なんてこった! つまりこの世界では『親愛度をMAXまで上げると眼鏡っ子が眼鏡を外してしまう』ということかァァー!!」
ふざけんな神。どうしてくれるんだあの転生の女神。
俺は眼鏡っ子に思いっきり好かれて思う存分イチャイチャしたいのに、イチャイチャするほどに好かれた相手は眼鏡っ子でなくなってしまうなど!
「くそっ、こうなったらなるべく親愛度を上げないように立ち回るしか……!」
「くっ、勇者ネズキ、この高貴なる姫騎士クッコローセを打ち負かすだけでなく、冷たく雑にあしらって放置をかますなど……! そんなの初めての経験で、あなたのことを考えるとドキドキしてしまうんだ……! 私の裸眼をもらってくれ……」
「ガッデム!」
「勇者ネズキ、きみはこのみすぼらしい身なりのぼく、路上少女ボンボーンにほどこしを一切せずに、あっちの立派な服を着た男に金を与えた……
ぼくが偽物の物乞いで、あっちの男は資金繰りのために見栄を張らざるをえない真の困窮者だと気づいての行動なんだね……
きみの人を見極める目に惚れたよ。ぼくの裸眼を捧げるよ……」
「ガッデム!!」
「勇者ネズキさん、余命いくばくもないわたし、病弱少女シヌシヌサーギとの約束、死ぬ前に一度伝説の山の頂上で伝説の満月を見せてほしいというわたしのお願いをすっぽかしてわたしを山のふもとで待ちぼうけにしてくれましたね。
周りがじきに死ぬわたしに場当たり的な優しい言葉をかける中、あなたは最期の思い出作りなどをせず厳しく当たってくれました。
おかげで死への後ろ向きなあこがれを振り切って、聖なる力に目覚めて病気に打ち勝ち、魔王と戦う力をも手に入れました。これからあなたと共に戦います。
その前に、まずはあそこの宿屋で、二人きりで一晩中、眼鏡を外し合いましょう……」
「ガッデェェム!!」
ちくしょう! ハーレム作りのチート能力のせいで何やっても恋愛フラグがバッタバッタ立っちまう! ヒロインの眼鏡が外れやすすぎるぞ最終盤のジェンガか!
「こんな世界で俺は……どうやったら眼鏡っ子ハーレムを作ることができるんだーッ!!」
これは俺ことネズキが、眼鏡っ子しかいないこの世界で、眼鏡っ子たちを真に愛するゆえに、眼鏡っ子からの真の愛を受け取らないように立ち回りたい、そんな不条理な物語である。
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