【Behind the Game】

エドワードは影の多い小道を跳ねるように進みながら、早い午後の空気が顔をかすめるのを感じていた。頭上で葉が揺れる微かな音が、彼のブーツが地面を打つ規則的な音と混ざり合う。鋭い視線を背後に向けると、見えるのは静まり返った小道だけだった。


「奴ら、引き返したな。」

静かだがどこか楽しげな声がその場を切り裂いた。


エドワードは瞬時に前を向き直した。勢いをつけたまま足を止めた彼のブーツが小石を擦る音を立てる。体全体が張り詰めたバネのように構えたエドワードの目の前に、レンがまるで空気から現れたかのように姿を現した。斜めに差し込む陽の光が、レンの静かな立ち姿を照らしていた。


「急に現れるな。」エドワードは鋭く言いながら、袖を払う仕草でその緊張を隠そうとした。口元にはわずかに皮肉めいた笑みが浮かぶ。「知り合いにそっくりだな、そういうの。」


レンの表情は変わらないままだったが、その手に握られたウイスキーボトルを少しだけ強く握り締めた。彼の中性的な顔立ちは、斜陽を浴びてどこか非現実的な雰囲気を漂わせていた。

「次は、こんなことに巻き込むのはやめろ。」レンは淡々とした口調で言い、手にしたボトルを軽く持ち上げながらその不満を示した。


エドワードは眉を上げ、皮肉を込めた笑みをさらに深めた。「ずっと見ていたなら、手を貸すくらいしてもよかったんじゃないか?」


レンの冷静な表情がわずかに崩れ、苛立ちが一瞬顔をよぎった。「なんでわざわざ助ける必要がある?」その声には明らかに呆れた響きが含まれていた。「お前が勝手に巻き込んだくせに。」


エドワードは笑みを浮かべたまま、少し真剣な口調で答えた。「今は相棒だろ?」


レンは長いため息をつき、肩の力を抜いた。その態度は、エドワードの言葉に諦めたようにも見えた。「ほら。」そう言いながら、手にしたボトルをエドワードに差し出した。「こんなもの、持っていたくないんだ。」


エドワードは歩きながら軽く手を振り、それを断った。「お前が持っておけ。」


レンは意外そうに目を瞬かせ、すぐに足を早めてエドワードに追いついた。「待て、こんなもの押し付けるな!」彼の声には、心底困ったような調子が混じっていた。


「飲むなり捨てるなり、好きにしろ。」エドワードは冷静に答えながらも、周囲の庭を注意深く見回した。整えられた生け垣や鮮やかな花壇、ところどころに並ぶ大理石の彫像が平穏な雰囲気を醸し出している一方で、二人の間に漂う緊張感とは対照的だった。


レンはエドワードに合わせて足を速めながら言った。「あいつが、俺がこのボトルを持ってた時の顔を見ただろ?今にも殺されそうだったんだぞ。」その声には、どこか本気の恐怖が滲んでいた。


エドワードはちらりとレンを見て、口元に薄い笑みを浮かべた。「冗談だろう。リラックスしろ。ただのゲームの一環さ。」


レンの顔は驚きと信じられないような表情に歪み、深く眉を寄せた。「ゲームだって?彼女、明らかに殺気を放ってたぞ!それに、お前は奴らと戦って肋骨を折る寸前だったじゃないか!」


エドワードの笑みがやや思案気味なものに変わり、少し首を傾けた。「彼女の殺気を感じ取れたのか?それは面白いな。俺にはわからなかった。」


レンは足を止め、口を開けたまま呆然とした。「本気で言ってるのか?ただ見てただけで、どれだけ本気だったかわからなかったのか?」


エドワードは軽く笑いながら、ゆっくりとした足取りで歩き続けた。「今度、殺気の感知方法を教えてくれよ。便利そうだな。」


レンは髪をかき乱しながらうめき声を漏らした。「せめて彼女のウイスキーを持って行けよ。お前の方が彼女をよく知ってるだろう!」


エドワードは歩みを止め、完全に振り返ってレンを見た。その笑顔が消え、代わりに軽い苛立ちを浮かべた。「いいか、相棒。そのボトルはお前が持て。そして俺を追いかけるのもやめろ。もう芝生を歩いてないから、俺の面倒を見る必要もないだろう。」


レンは肩を落とし、大きなため息をついた。「もう芝生の問題じゃないんだよ。どうせ何か企んでるんだろ?」


エドワードは歩みを止め、遠くにそびえる講堂のシルエットを指さした。整えられた庭園の向こう側に、荘厳な建物が静かに立っていた。そのアーチ型の天井や細かく彫刻された装飾は斜めに差し込む陽の光を浴び、窓ガラスが黄金色の輝きを反射している。近くでは小さな噴水のささやき声が聞こえ、鳥のさえずりが穏やかな空気を引き立てていた。


「見ろ、あの建物を。」エドワードの声は静かな決意を帯びていた。


レンも指の先を追い、その壮大な講堂の姿に目を留めた。磨き上げられた石造りの外壁が陽光を浴び、そびえ立つアーチが学院の威厳を物語っていた。


「それがどうしたっていうんだ?」レンは好奇心を含ませた声で問いかけ、視線を再びエドワードへ戻した。



「開会式がもうすぐ終わる。」エドワードはきっぱりとした口調で答えた。「俺にはやるべきことがある。」


「やるべきこと?」レンの眉が寄り、さらに質問を続けようとしたその瞬間――


エドワードの姿は消えていた。


レンの目が見開かれ、周囲を見回す。庭園には木々の葉のかすかな揺れと、遠くから聞こえるメイドや執事たちの声の響きだけが残されていた。


「はっ?!」レンの声には驚きと困惑が入り混じっていた。


彼は先ほどまでエドワードが立っていた場所を凝視し、ぼそりと呟いた。「あいつ、気功(チーゴン)を使って消えたのか?」眉をひそめながら信じられない表情を浮かべた。


手の中のウイスキーボトルを見下ろし、指を少しだけ強く握りしめる。唇をわずかに歪めて苦笑を浮かべた。「それができるなら、最初から使えばいいだろうが……。」


長いため息をつくと、レンは疲れたように近くのベンチへ向かった。重い足取りで腰を下ろし、木製のベンチが微かにきしむ音を立てる。手に持ったボトルをじっと見つめながら、呟いた。「執事として初日なのに、もうこれかよ……。」

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