第11話 ギヴ・ミー・スタンダップ!!

失わずに覚悟を決める。

昨晩考えたが、あの2人は覚悟を決める為に全てを失った訳ではない。ピンクモーゼは覚悟を決めて自分で選択した結果、失ったのは周囲への配慮。BSは家族を失った結果生きることに執着する覚悟を持った。

何れにしろ、何かを失わなければスタンダップは付与されないというのは幻想なのだ。

失ったモノの対価により付与される能力もそれなりのモノが付与される。

それが分かっただけ発見である。

しかし、やはり何かきっかけが必要である。

ピンクモーゼは会社のハラスメントが嫌になってというきっかけがあるし、BSは家族の死をきっかけに能力が発動している。


う~む...会社のハラスメントは今のところ我慢できているし、家族が火事に巻き込まれて死ぬというのは不運としか言いようがない。


私はそこら辺に何かきっかけが転がっていないか、クンクン嗅ぎ回る犬のように何かないか何かないかとそこら辺を歩き回った。しかし、えてしてそういう時に限って何も起こらぬものである。私は諦めて待つことにした。探すから、期待するから、クンクンするから何も起こらぬのだ。

起こらぬなら

起こるまで待とう

ホトトギス

である。


毎日真面目に働き、決められた家事をし、土日は近所の子供らとバスケをし、家族サービスに外食をする等、毎日真面目に過ごした。結果、失うばかりか得をすることが多く、このままでは何もほんとに起こらぬままスタンダップも付与されぬまま一生を過ごすのではなかろうかと不安に思った。思ったが、起こるまで待つことに決めた私は何がなんでも待つことに意固地になった。意固地に真面目に働くもんだから得ばかりして全く何も失うような事がない。というか、真面目に過ごすということは、何も起こらぬように過ごすことなので、結果何も起こらぬのだ。ということに気づいた。しかし、時既に遅し。毎日真面目に働き、何も起こらぬように過ごしてしまう事が身に染み込み過ぎて、後にも先にも何も起こらぬよう完璧な状態を保つことが日常となってしまった。

気が狂いそうになった。

こんなにもスタンダップを欲している私が、毎日真面目に生きれば生きる程、スタンダップから遠ざかっていく。では不真面目に生きれば良いではないかと思うかも知れんが、それは私も思ったので不真面目に生きてみた。ダメであった。何が起こるか分かってしまうもんだから更にその先をカヴァーし、それをサボるとこうなるからこうしようあ~しようと、どんどん先々に起こらぬよう行動してしまうので結果何も起こらぬ。ほとほと参ってしまった。スタンダップを欲しがれば欲しがる程に遠ざかる。


もう私には何も起こらない。


1日を終え、家路に着いた私がそう思った時、遂にその時は訪れた!

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