第6話 ピンクモーゼの紹介

覚悟が決まらぬうちに、人生は過ぎ去っていく。

フラミンゴおじさんは相変わらずモーゼの如く信号無視。走る車はおっさんの近くまで行ってスピードを緩めて走る。まさに神の所業。


欲しい。


あの能力が欲しい。私もあのおっさんのように傍若無人の信号無視をしてみたい。と、渡りきったおっさんを見ていると、高校生の群衆がおっさんの前から歩いてくる。普通群衆を避けるように歩くものだがおっさんは真正面からその群衆に突っ込んでいく。するとどうだ。おっさんの通り道を開けるように群衆が端に寄るのだ。とことん神の所業。


ますます欲しい。


ますます貪欲になっていく私。どうしようもなくあのおっさんの能力が欲しい。しかし、どんな能力が開眼するかは開けてビックリ玉手箱状態、開けたら時間の操作能力が手に入るかも知れぬし、もしくはリアル鼻眼鏡が一生取れぬ能力かもしれぬ。...うぬぬ...鼻眼鏡にバーコード頭が付いてくるかもしれん。せめてこれだけはしておいたら成功するよ的な何か無いだろうか?おっさんに聞いてみようか。


てことで、早速有給消化してフラミンゴおじさんに会いに行った。いつもの通りで呆けて待っていると、来た来た。今日もピンクのおっさんがモーゼのように...長いな...もうピンクモーゼで通じるよね。

正面からピンクモーゼが歩いてくる。今日もなかなかのモーゼぶりである。モーゼっている。

ピンクモーゼは私の事を忘れていたようで、声をかけても知らんぷり。もう一度でかい声で声をかけるとようやく振り向いて

なんだい?

と、応答してくれた。


お忘れですか?先日、あなたのスタンダップ能力をお聞かせ頂いた者です


ピンクモーゼは私の姿をスキャンするかのごとく下から上まで見て口を開いた。


あ~...あんたか...何処かで見たなと思ってたんだ。で、覚悟はついたかい?


それなんですが...せめてこれさえしておけばこういう能力が手に入る可能性は高くなるとか、何かやっておいた方が良いよってことはないですか?


う~ん...私の経験則からは何も言えないね~...ただ、同じようにスタンダップ能力を発現させた知人がいるよ。そいつに聞いてみるのも有りかもね


え!?その方は何処にいらっしゃるんですか?


私が昔開いた土地に新しく大きな橋が出来た。新しいったって、2~30年前だけどね。そこの橋の下にいる筈だよ。


2~30年前出来た橋?...あの大橋の下ですか?浮浪者しか居ないと思うんですが...


あんたも分からない人だね。全てを失って初めて発現するって言ったじゃあないか。


そ、そんな...


都合の良い人生なんて無いもんさ。特にこんな超常的な能力を何も失わずに得ようなんてムシが良すぎるね


...そうですよね...じゃあせめて、その方の能力が何か教えてもらえませんか?


...ほんとは言っちゃいけないんだけどさ、能力は馬鹿力。怪人ハルクって緑色の怪人分かる?あれよあれ。あと、私と同じように、時間操作も少し出来るようだけどね。


え!?1人1能力じゃないんですか?それも同じ能力って?


漫画の見すぎよ。変な常識に囚われすぎ。時間操作なんて簡単な方だと思うわ。むしろハルクのような怪力を持つ方が私にとっては異常よ。じゃ、頑張ってね。


そういってフラミンゴおじさん、もとい、ピンクモーゼは買い物に行った。


時間操作能力が簡単?それも複数の力を得られるというのか?


私は急いで橋に向かって車を走らせた。

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