第16話
吸っていたタバコを地面に捨て、足で揉み消しながら上げたその顔は、紛れもなく男のものだった。
それも若い。
髪の色とか形とかだけじゃない、
どこか鋭さを感じさせるその雰囲気や、尖ったような――それでいて淀んだような、彼自身から発せられる空気そのものが、
若い頃には気づかなかった“若さ”を思い起こさせた。
「おねーさん、コンビニ行ってきたんだろ」
「えっ、」
「なんか間違えて買ってきたんじゃねェの?」
「あ、えと」
「いらねェんだったら俺にくれよ」
「………」
「寒いし腹減ったし、どーすっかと思ってたんだよ。おねーさん最高のタイミング」
目の前で足を止めた彼はちょっと見上げる風にしないと目が合わなくて、
口の端を軽く持ち上げて私を見下ろすその顔は、一瞬息をのむほど整って甘さを含んでいた。
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