第2話 言葉にしてしまえば

「言葉にしてしまえば」

 口にしてしまえばどうってことはなかった。

あれだけ悩んだ末の答えだったのに。

答えという言葉が正しいのかもわからないけれど、ただ、これが自分と彼のためだと思った。

言い訳じゃないかと、ふと思う。

これが正しいと思っているから「答え」なんて表現をするし、「ため」なんていうんじゃないかって。

今は考えたくない。

ただ、あの人じゃなかっただけ、私じゃなかっただけ。

世間の言葉を信じるなら私の人生はあと80年ほどあるわけだし。

悲しいなんて思ってはいけないんだと言い聞かせる。私の中の「ため」が嘘になってしまうから。

そんなことを思っていたら、ふと自分の中の誰かが「なら、話し合えばうまくいったの?」って聞いてくる。私は「それはないな。」と即答していた。

そうだ、覚悟していたことだ。最初からそのつもりで今日を迎えた。

葛藤には飽き飽きしている。

安っぽいラブソングみたいな言葉で別れを告げたことへの後悔とか、たぶん、今はいらない。

(おそらく)考えても無駄なことが脳内をぐるぐるしているのが無性にムカついて頭をブンブンと振ってみる。

さっきから見えていたはずの電車の景色がまるで今見え始めたみたいで変な感覚だ。すごい変な行動をとってしまった、と急に俯瞰視点から見えた自分を恥ずかしく思って顔が少し熱くなる。


 ふと、電車に揺られながら、

「あの人はもう家についたかな」

という言葉が脳内にうっすらと煙みたいに浮かんで私はそれを吹き飛ばそうとまた、頭を振った。

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