第2話

 夢を見ていた。




 あの時の夢だ。






 目玉は真っ先に溶けた。いつのことだったかは、もう忘れてしまったけれど。


 だから、目の前はとっくに真っ暗だ。


 水はぬるく、臭かった。


 いろんなものが礫になって、ぼくの体のあちこちにぶつかる。


 最初はあんなにこの水は冷たかったのに、と思う。



 ぼくの皮膚にはたくさんの痣ができていたが、骨はまだ白々として皮の中に存在している。


 まな板の上で叩かれる肉の気分で、いっそ柔らかくなってしまえば、どろどろに、粉々に、骨も、筋肉も、脂肪も、ぜんぶ分からないくらいに溶けてしまえば、ずぅっと楽になるだろうと考えていた。


 水は色々なものをその身に混ぜて、いっしょくたに流れていく。ぼくも早く、いっしょくたに混ざってしまえと思った。




 この苦痛が終われば、それでいいのだ。




 濁った闇の中で、右の眉間に大きなものがぶつかって、それからは本当に真っ暗になった。

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