第49話 15年も居て戻ったら高校生のままなんてそんな不正は認めません。

 それからは。

 禁術を端から調べていき、ドラゴンの知恵も借りたりしながら。

 元の世界に帰る方法を本格的に探し始めた。


 途中、シャルやヨージョと一緒になったり、彼女達の仕事も手伝うこともあったり。


 3人の恋人達と、お互いの合意の上で少しずつ関係を進めていったり。

 たまに内緒で抜け駆けしたり。


 時には対立組織と戦い。


 完全に幻術の無効化に成功したワフウ姫に呼ばれて、マボロシ国を訪問したり。


 そして、指定した範囲の物体を異界に送り飛ばす『禁術』転送魔法の使い手を探し当てたのが、5年後。


 本部研究員やドラゴン達の協力の下、その転送魔法の研究を続け。

 シャルの召喚魔法と併用することで、一度送り飛ばした物体を指定して再召喚できることが確認され。

 何度も実験を繰り返し、送る先の世界を探し。再召喚の際に近くの物体も一緒に召喚することができるようになり、どんな世界だったかの判別が可能になったのが10年後。


 そしてマシュの肉体に紐付いた情報から、彼の世界の特定に成功し。


 気が付けば、彼がこの世界にやってきて15年が経っていた。






✡✡✡






「うおっ」


 身体の光が、淡く視界をも塗り潰す。次に目を開けた時には、景色が何もかも変わっていた。


「………………ここは」


 変わっている。だが、分かる。あの建物。あの駅。

 入っているテナントも変わっているが。


 ここは梅田駅だった。


「内山」

「おん?」


 ひどく懐かしい……いや。よく分からない声の主を探すと。


「…………お前、内山か?」

「……もしかして加藤か?」


 スーツ姿で、少し老けた友人がそこに居た。


「うおおおおっ! ほんまに戻ってきた! 加藤シメサバやんけ!」

「マジかぁあっ!? お前内山シュバルツやんけ!」


 大の男ふたりで抱き合う。泣きながら。お互い肩を叩き合いながら。


「おい取り敢えずお前の家行くぞ。親御さんに顔見せたれ。マジでお前……。まさか15年掛かるとは思わんやんけボケェ」

「いやマジでやばかったんやって。聞けよ俺の冒険譚」

「おうなんぼでも聞いたる! 酒や酒! ちょい待てよ俺も家族に連絡するから」

「シメサバと酒呑めるとはなぁ。って、お前結婚しとん?」

「せやで。もう『加藤』ちゃうねん。『八戸シメサバ』や」

「おお。狙ったやろそれ」

「お前は? 向こうでお姫様とハッピーエンドしたんやろな」

「ああ俺は嫁3人居るで」


「はぁっ!? ふざけんなよマジでコラァ!」


「はっは。そのキレ芸も懐かしなあ」



「あっ! あの幼女か! お前幼女に手を……!」



「アホ。諸々大丈夫や」




「写真あるんやろなぁ!?」




「あるで。……あ。もうひとりの脚フェチ女は写真無いわ。充電切れる前の15年前の王女と幼女は写真あるで」





「あ″ぁ″ん!?」





「キレすぎやろ…………」





「…………」







「……」

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