禁術使いと被召喚者〜テキトーでゆるそうな異世界に召喚されたけど実は思ったよりシリアスな世界観で反応に困るんだが、流石にヒロインの国を滅ぼしたクソ野郎は倒して元の世界に帰ることを目指す大阪の高校生の話〜
第29話 実は味方の攻撃から味方を守る為の盾というどこまでも地味でダサい主人公
第29話 実は味方の攻撃から味方を守る為の盾というどこまでも地味でダサい主人公
魔法協会所属の戦闘部隊『魔法騎士団』。
彼らの仕事は多岐に渡る。
この世界では一般的には、『魔法』に関する国際的な取り決めを取り締まる警察のようなイメージを持たれている。また、支部に行けば魔法についての相談に乗ってくれることもある。
このような街中で勤務する魔法騎士ではなく、今回は
基本的に少人数で行動する冒険者とは違い、魔法騎士は『軍隊』として、大所帯での『進軍』を前提としている。
少人数だと分散するよりも固まって行動した方が安全かつ強いのが冒険者の間での常識だが、ヨージョがしきりに『
即座の対応力が低い『本隊』が居て、『
革と鉄板で編まれた鎧で武装した騎士が、5人一組で1小隊。それが最低4隊で1中隊。
今回、マシュ達が遭遇したこの騎士団は2中隊規模のものだった。
隊の中に、
ようするにヨージョとハクを足して少し弱くしたような
彼らが
彼らの今回の目的は、ある『人物』をサイコキネシス王国の魔法協会本部に送り届けることだった。
「うおお! 来るぞ! せーのっ!」
ドカン。
これで、オークの攻撃を3度防いだ。5体のオークは横一列になって騎士団の『本隊』を襲撃している。マシュが割って入った箇所の被害はなんとか抑えられているが、他の所はこのままだと崩壊する。
「おいあんた! 無理だよ! ここだけ守れても……! 無謀だ!」
「ぐぅっ!」
そう何度も防ぎきれるものではない。マシュの背後から騎士達が魔法を放つが、オークは怯まない。傷付き、流血し、肉体が欠損しても。なおも超怪力で大剣を振るう。
「は! ええなあ! 頭半分になっても引かへんのか! お前らオークにとって、そない大事なモンがあるんか!?」
オーク達を前線に出して。
その背後には、20匹超のゴブリンが居る。確かにこの戦力では、騎士団1個中隊とほぼ同等の戦力だ。ゴブリン達は戦いの脇をするりと抜けて、『本隊』の荷車や女性騎士に襲い掛かっている。
「『
そのゴブリンを、後方のシャルやハクが迎え討っていた。明らかに彼女達が狙われ始めた。鎧を着ていない『女』だからだ。オークやゴブリンは、他種族のメスを使って繁殖する生態を持っている。これは本能だろう。
「……はっは」
「おいあんた……!」
マシュは。
自分達が飛び込んだだけでは戦況は変わらないことを分かっていた。恐らくオーク達は、このまま使い潰される。犠牲を払った末に、5体とも討伐することは可能だろう。だが『本隊』はどうなるか分からない。この戦争は『痛み分け』となる可能性が高かった。
マシュは、笑った。笑うしかなかった。
「騎士さん。俺のパーティな。
「……!? そんなもの、どうやって敵を倒すんだ!?」
「はっはっは。……攻撃手はひとりで充分なんよ。俺ら、実は『オマケ』やねん。要らんちゃ、要らん」
すうっ。
息を吸い込む音が、聴こえた気がした。
「マシュ!! 全員あんたの後ろに投げ飛ばしたわ!!」
「!」
大音量。戦場全体に響き渡る、『魔王の声』。
マシュはさらに口角を上げた。
「よっしゃ! シャルー!」
「…………はいっ!」
マシュの盾は。敵の攻撃を防ぐのは役割のひとつに過ぎない。
「『禁術』使役魔法『改造』→支援魔法!」
シャルの発動と共にマシュが光を纏う。その光は盾へと伝播していき、光の盾となる。
「『
光の盾はその面積を増大させていく。大きく巨大化していく。
それはマシュを先頭に、後方の『本隊』ごと、その場の人間全員を守るように展開された。
「『魔王級』火魔法『我流』→『幼女火祭り』」
ヨージョが。風魔法を使って上空へ飛び上がった。因みに禁術指定の飛行魔法ではないので空中での姿勢制御等はできない。
「すぅっ!」
上空から、真下を向いて。息を吸い込み。
「――『
マシュとシャルの『必殺技』
何もかもを炭と灰に変える、
自分達の身を守るために編み出したのだった。
どれだけ、何十体敵が居ようが関係無し。その数も規模も強さも魔法耐性も無意味。
色も音も消えた。
強烈に濃い影ができる白い白い世界の中で。
熱を感じる前にこの世から去ることを許されたようで。
彼ら亜人が最後に見た光景は。
魔王というより、『火の女神』に近かったことだろう。
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