禁術使いと被召喚者〜テキトーでゆるそうな異世界に召喚されたけど実は思ったよりシリアスな世界観で反応に困るんだが、流石にヒロインの国を滅ぼしたクソ野郎は倒して元の世界に帰ることを目指す大阪の高校生の話〜
第26話 チートを許さないという点では魔法協会と魔導連盟は同じ立場ではある
第26話 チートを許さないという点では魔法協会と魔導連盟は同じ立場ではある
それからしばらくは皆放心状態で動けなかったが。
ドラゴンの追跡から逃れる方法を考えなければならない。この辺りには
4人はこの辺りに生える葉を帽子にすることで、空からの隠密性を上げることにした。
「……ドラゴンって、人と話せるんですね……」
まだ、興奮冷めやらない。誰も知らない、書物にも載っていなかったことだ。ドラゴンと意思疎通する民族が居る……どころではなく。
実際に『言葉』を交わすなど。
「……ま、これが冒険の醍醐味ではあるわね。このパーティに『冒険好き』が居ないから誰も喜んじゃいないけど」
冒険者とは。主に
奥地へ行けば危険度も上がるが、その分新発見は多い。トップレベルの冒険者はドラゴンと会話ができることも知っているかもしれない。
「……シャル」
「はい。マシュさん」
シャルは、ドラゴンが飛び去って翌日にようやく落ち着きを取り戻した。国を滅ぼしたのが人間の悪意だけとは言い切れず、
「聞かせてくれんか。『召喚魔法』のこと」
「!」
これまで。マシュ達はその禁術について、魔法的な説明は受けてきたが。
それが歴史的、文化的、政治的にどのように扱われてきたのか。どのように継承されてきたのかは知らない。
ル家の末裔。禁術の発明者の子孫。シャルルルルル・ル王女のみが、知っていること。
「……お祖父さまやお父さまからは、この魔法は『不幸を喚ぶ魔法』だと教わりました」
✡✡✡
『召喚魔法』。それらを扱う為の技術を総称して『召喚魔法術』。
サーモン王国王家に伝わる『禁術』であるが、『サーモン王家が作り出した』のではない。
『召喚魔法術を編み出した者が国を建てた』が正しい。
公式に残っている最古の召喚は、約500年前。
継承者のひとりであった王子が、他国に留学していた際にトラブルがあり、召喚魔法を使用。
『とてつもない量の火と熱』が召喚され、その国がその後数年間、爆心地に残った『毒』で近付けなくなったほどの大損害を与えたと記述されている。
恐らくは放射性物質に似た物質を含む、異界の化学兵器爆弾であろう。地球産かどうかまでは分からないが。
勿論その王子も即死。国際問題となったが、原因を召喚魔法に断定できなかった為、それ以上の追及を避けられた。
当時は禁術指定もされていなかった為に本国にも継承者は何人かいたが、その危険性も同時に伝承されており、王族の初級魔法習得者のみに継承させていた。
召喚魔法の研究は、さらに前から行われていたとされる。書物ではなく口伝になるが、戦争に勝つために使用したところ、1000年以上文明の進んだような超戦士が現れ、しかしル家の召喚主の命令に従わずに逆に殺されたという言い伝えもある。
『洗脳魔法』『使役魔法』は、そういった『失敗』から編み出され、組み込まれ、改造されていったのだ。
さらに昔となると。本当に原始的な生物や道具の召喚があったようだ。喚び出して目的を達成すると自ら死んでいくような獣や、ちょっと便利な拷問器具など。『下等生物』という感覚はこの辺りで培われたと思われる。
しかし、口伝や書物に記されるような召喚はその殆どが『失敗』であり、サーモン王国は何度も滅亡の危機に瀕していたことが分かる。召喚魔法とは、いつかマシュか言った通り『何が出てくるか分からないガチャ』であり、当たり外れのブレが大きい。
しかし、国が重大な召喚を行う時は決まって『それ以上の脅威に晒されている』時であり、背に腹は代えられないと使用されたことになる。
そんな歴史を歩む召喚魔法は、100年前に禁術に指定される。その切っ掛けはやはり当時の継承者が使用したことによる結果である。
他国との戦争中に召喚魔法は使用された。
召喚されたのは『異界の軍人』と『人の手で作ったらしい鋼鉄のドラゴンのような飛行機械』である。
軍人は洗脳魔法によりサーモン王国に忠誠を誓った。その機械に乗り込み、上空から敵国を襲った。
機械は『恐ろしく速く遠くまで飛ぶ金属の鏃を絶え間なく連続で発射する弦の無い弓』と『ありえないほど広範囲を巻き込む小型の毒爆弾』を武装していた。
一夜にして主要軍事施設を焼け野原にし、軍も国も維持できないほど人が死んだ。
サーモン王国としては『大成功』であるが、この世界のパワーバランスを無視したような成果が魔法協会の目に留まり、禁術として指定されることとなった。
サーモン王国の勝利は魔法協会が介入したことで『
それから100年。
召喚魔法などという言葉も誰も口にしなくなった頃。
ただの伝統というような認識にまで成り下がった骨董扱いの魔法を継承したのが、王女シャルルルルルである。
✡✡✡
「――と。このように、召喚魔法は強力ですが、同時に危険も孕んでいて。いずれにせよ世界に良い影響は与えず、使えば往々にして不幸になると教わりました。ですから……」
「シャル」
グレゴリオが話した危険性と一致していた。間違いないのだろう。召喚魔法は『ガチャ』であり、アタリでもハズレでも良くないことになる。
「…………俺も、あのグレゴリオに見定められてんのか」
マシュが、この世界に与える影響も危惧されている。今はまだ、これといって何も無いが。今後どうなるかは誰にも分からない。
「わたくしは、軽率に使用したことを反省しておりますわ。ですが、後悔はしておりませんの。マシュさんと出会えて嬉しかった。全く、不幸なんかじゃありませんわ」
「…………シャル」
シャルは、マシュに責任を感じさせないように精一杯の笑顔を向けた。
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