禁術使いと被召喚者〜テキトーでゆるそうな異世界に召喚されたけど実は思ったよりシリアスな世界観で反応に困るんだが、流石にヒロインの国を滅ぼしたクソ野郎は倒して元の世界に帰ることを目指す大阪の高校生の話〜

弓チョコ

第1話 多分全編通して一番可哀想なのはシメサバ(名前が)

 召喚魔法。異界から下等な生物を呼び寄せて使役する魔法のこと。

 古来からこの国では飢饉や天災、戦争の度に召喚魔法を利用して人々を守ってきた。


 だが、時が経つごとにに召喚される下等生物の知能や能力が上がってきており。

 その異界や下等生物の『都合』や『権利』が主張され始め。使役するため副次的に組み込まれている『洗脳魔法』も問題視され始め。


 幾度の交渉と戦争の末に、召喚魔法は『禁術』として魔法協会の承諾無しに使用してはならない魔法に指定された。


「……誰か、助けて……」


 それから約100年。

 その少女は大粒の涙を流しながら、悲痛な叫びを押し殺していた。






✡✡✡






「『何故人を殺してはいけないか』?」

「そう!」


 大阪府北区某所。

 大学受験を控えた高校3年生内山シュバルツは、小学校からの同級生である加藤シメサバと駅前の大型ショッピングモールをぶらぶらしていた。


「そらお前……。犯罪やろ。法律で禁じられとる」

「予想通りの典型的な回答やな内山ぁ」

「なんやねんお前。ちゃうんかい」


 内山の答えに、にやりとして指を振る加藤。


「例えばや。法律なんちゅう洒落たモンができる前から、部族や村や集落でも人殺しはご法度やろ」

「……はぁ。まあそうやなあ」

「つまり、法律は後からできただけやねん。その前に、『人を殺したらアカン観念』があったんや。それは何故か? っちゅう」

「まあ月並みやろうけど、殺されるんが家族友人なら許せへんし、自分も殺されるかもしれんなら安心できへんし、人殺すような奴と一緒に暮らすのは無理やろ」

「そやろ。そういう、人の普通の観念が今日の法律に繋がっとる訳や」

「なんか普通の話やな」

「もう1個あるで」

「それが本題やろお前」

「『労働力が減る』んよ」

「……ん?」


 得意気な加藤の言葉に、内山は首を捻った。


「家族、村、街、国。人間が集まる理由はこれ、『効率が良い』からやねん」

「……ん。分かるで」

「生きるために仕事するやろ。国を生かすための仕事でもあるんや。人ひとりの生産性の積み重ねが国家レベルまである訳や」

「ふむ」

「その貴重な労働力を減らす行為が殺人やねん。国にとっての損失。国いうても俺等国民ひとりひとりやから、全員の問題や。殺すとかお前、何しとんねんクソボケ案件な訳や」

「ほー。知らん観点やったわ。なるほどな」

「勿論感情論とか色々あるけどやな。殺人鬼を逮捕せず放っとったらどんどん殺すやろ。労働力減って国が衰退していずれ滅亡するんよ」

「そらクソボケ案件やなあ」


 加藤の自論に深く頷いた内山。


「まあつまり、『今現在法律になってへん』からといって、全てが絶対に許されるなんてこともあらへんのや。時代時代によって状況もできることも変わる。法律もその都度合わせて変えていかへんとアカン訳や。どうしても法律の方が後出しになるんや」

「つまり?」

「クソ転売ヤーと自作発言パクリ絵師もどきははよ滅べクソボケってことやな」

「お前それ言いたいだけやろ」

「俺は許さん。弟がキメツのグッズ買えんくて泣いてんぞ。ほいで俺の好きやった絵師さんが絵パクられてレスバしまくって粘着されまくって嫌がらせ受けて引退した。許さん」

「まあ気持ちは分かる」


 その時。

 内山の身体が淡い光に包まれた。


「は? なにこれ」

「お? なんや内山ぁ。おん? 光っ」


 そこが。

 内山シュバルツの、『推定死亡時刻』となった。






✡✡✡






 内山視点ではこうだ。

 自らの身体が光り始める。それは徐々に強くなり、眩しくなる。視界も全て光に包まれる。


 その後、『体感温度』と『匂い』が変化した。現在は202X年6月の大阪市だった筈だ。だが冷たい。ひんやりとした涼しい空気。

 そして匂い。臭いのだ。じんわりと、不衛生な匂い。大阪市で言うなら、西成区某所のような――


「…………dvh……?」

「おん?」


 次に、声。明らかに高い女声。加藤の声ではない。そして、日本語でもない。

 しばらくして、眩い光が収まってくる。内山はゆっくりと慣らすように目を開ける。

 すると。


「……dvhXhjm,h……! Sii!」

「おん?」


 内山の目の前には、埃や泥で薄汚れたプラチナの髪をして、白い肌を赤く泣き腫らせた、同年代くらいの年格好の少女が地べたに座り込んでいた。

 白を基調としたロングスカートのドレスは泥で汚れており。

 見渡すとこの場所が、壁に掛けられた蝋燭を頼りにする洞窟の中であることが分かった。


「…………は? なんやこれ。加藤? おい? シメサバ!」


 どっ。

 内山の心臓が跳ねた。嫌な汗が出る。ありえない。今の今まで、梅田に居た筈なのだ。


 だがこの空気。音。感覚。リアリティ。内山の五感が、ここを現実だと叫んでいた。


「……なんやこれはあああああ!!」


 同時に内山本人も叫んだ。

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