撮り鉄が本当に悪い?印象操作されていませんか?

星咲 紗和(ほしざき さわ)

本編

鉄道好きの私にとって、「撮り鉄」が報道で取り上げられるたび、少し胸が痛むことがあります。私自身、電車に乗るのは得意ではありませんが、見るのは大好きです。車両のデザインやその機能美、背景にある鉄道文化に魅了される一人として、撮り鉄の気持ちは理解できる部分も多いです。しかし昨今、撮り鉄がマナー違反や迷惑行為をしていると報じられる場面が増え、鉄道ファン全体に悪いイメージが付いていることには疑問を抱かざるを得ません。


報道で描かれる撮り鉄の姿


テレビやネットニュースでは、撮り鉄の危険行為や迷惑行為が大きく取り上げられることがあります。ホームから身を乗り出す、立ち入り禁止の場所に侵入する、列車を撮影するために列車運行に支障を与える行為など、耳を疑うような事例も確かに存在します。こうした行為は鉄道の安全運行に直接影響を及ぼすものであり、厳しく対処されるべきです。


ただ、こうした一部の過激な行動が目立つことで、撮り鉄全体が悪者にされているようにも感じます。「撮り鉄は迷惑な存在」というイメージが広がり、鉄道ファン全体に偏見が向けられることは不公平ではないでしょうか。


撮り鉄は本当に全員悪いのか?


鉄道ファンの中にも、ルールやマナーを守りながら趣味を楽しむ人たちはたくさんいます。駅や沿線で撮影するときも、他の乗客や地元住民に迷惑をかけないよう気を配り、むしろゴミ拾いや清掃を自主的に行う撮り鉄も存在します。これらの「良識ある撮り鉄」の姿は報道されることが少なく、結果的に「迷惑行為をする撮り鉄」の印象ばかりが強調されてしまうのです。


報道はしばしば、一部の目立つ行為を切り取ることで視聴者の興味を引こうとします。そうした「印象操作」の結果、視聴者は撮り鉄全体を否定的に見るようになり、偏見が広がるのではないでしょうか。


迷惑行為はどの業界にも存在する


迷惑行為をする人は、鉄道ファンに限らずどんな分野や集団にも一定数存在します。たとえば、メディア業界自身にも問題行動はあります。被災地での取材において被害者のプライバシーを侵害したり、遺族の心情を無視して強引なインタビューを行ったりする場面は過去にも何度も報じられています。これもまた、被害者から見れば「迷惑行為」といえるでしょう。


一部の撮り鉄が迷惑行為をしているからといって、撮り鉄全体を悪者と決めつけるのは不適切です。同様に、メディア業界全体が悪いと断じることもできません。それぞれの業界や趣味の中で、悪目立ちする人が注目されやすいだけの話です。


メディアが悪者を作り出す仕組み


メディアが「悪者」を作り出すことで得る利益についても考える必要があります。ニュース番組や記事では、視聴者や読者の関心を引くために「敵」や「問題児」を見つけ出し、その存在を強調する傾向があります。そのため、撮り鉄の迷惑行為がセンセーショナルに報じられる一方で、良識ある撮り鉄の姿や、趣味を通じて地域活性化に貢献している事例などはあまり注目されません。


視聴者にとって分かりやすい「悪者」を提示することで、問題を単純化し、感情的な反応を引き出そうとする意図が見えることもあります。この手法は視聴率やクリック数を稼ぐ上で効果的ですが、事実を正確に伝えるという点では問題があります。


情報を多角的に捉える力を持つことの重要性


私たちが報道を見る際には、一面的な情報に流されず、多角的な視点を持つことが重要です。メディアが伝える内容を鵜呑みにせず、裏側にある意図や、報じられていない事実についても考える姿勢が求められます。


たとえば、「迷惑な撮り鉄」という話題が報じられた際には、「なぜこの話題が取り上げられたのか」「すべての撮り鉄がそうなのか」「他の鉄道ファンや鉄道業界との関係性はどうなのか」といった点に目を向けてみるべきです。


また、個人でも情報を発信しやすくなった現代では、SNSなどを活用して良識ある撮り鉄の行動や鉄道趣味の素晴らしさを広めていくことも可能です。偏見をなくし、正しい理解を広げるためには、こうした草の根的な活動も重要な役割を果たします。


まとめ:迷惑行為と偏見を切り分ける視点を持とう


撮り鉄に限らず、どの分野にも迷惑行為をする人は一定数存在します。その一方で、大多数の人々はルールやマナーを守り、趣味を純粋に楽しんでいるのです。一部の悪目立ちする行為だけを取り上げて全体を否定的に見るのではなく、個々の行動を冷静に評価し、多角的な視点で物事を考える必要があります。


報道を鵜呑みにするのではなく、自分の目で見て、多方面から情報を検証する力が求められる時代です。一つのニュースをきっかけに、撮り鉄だけでなく、メディアや社会全体のあり方を改めて見直す機会としていければと思います。

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