選択

透夜珀玖

 どうしようもない今日を生き抜く術は案外備わっているものです。

 けれどもそれをどうしようもないと思ってしまうのが人間で、それでも明日が来るのが人生というものでした。

 目の前で終電を逃した私は、顔を真っ青にした集団に流されながら地上に戻って参りました。辺りは一面真っ暗で街灯が最後の力を振り絞るかのように微かに光っています。

 私は大事な商談を翌日に控えており、今日は何としても帰宅する必要がありました。しかし不思議と冷静でいられたのです。

 ここから自宅までは電車で40分。タクシーを捕まえる他ないのですが、足が勝手に家に向かっているのです。その選択が無駄であることは明白でした。それでも、どうしようもないと思ってしまうほどでした。私がいなくても商談は成功するでしょう。明日を諦めようとしても、それでも足は止まってくれませんでした。どうやらもうどうしようもならないようです。私は諦めてバス停のベンチに腰を下ろしました。

 思えばこれが私の最後の対抗心だったのかもしれません。

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