古墳の光(築山古墳)

三分堂 旅人(さんぶんどう たびと)

古墳の光(築山古墳)

築山古墳のふもとに広がる町は、開発計画の真っただ中だった。町長の命令で古墳の一部を削り、広大なショッピングモールを建設することが決まったのだ。

「古墳なんてただの土の山だ。時代遅れの遺跡よりも、利益を生む施設が必要だ」

町長は鼻で笑い、強引に工事を進めるよう指示を出した。

その夜、古墳の頂上に **青白い光** が揺らめいた。誰もが疲れからくる目の錯覚だと思った。

だが、次の日から **異変** が始まった。

町役場の職員が次々と高熱を出して倒れた**。熱の原因は不明で、薬も効かない。工事現場の重機は謎の故障を繰り返し、エンジンが勝手に停止することもあった。さらには重機オペレーターが失踪するという不可解な事件まで発生した。

町長は「偶然だ」と笑っていたが、心の奥底には不安が広がり始めていた。

その夜、町長の自宅に 古い和紙に書かれた手紙 が置かれているのを見つけた。墨で書かれた文字は揺らぎ、読みにくかったが、確かにこう記されていた。

「魂を乱すなかれ。汝の手が、歴史を貪る時、光は裁きを下す。」

町長は愕然としながらも、「いたずらだ」と自分に言い聞かせ、計画を進める決意を固めた。

翌日、工事は再開されたが、最初の一撃は 巨大な落雷 だった。古墳の周囲で 稲妻 が炸裂し、重機はすべて炎上。作業員たちは逃げ惑い、工事は完全に停止した。

その夜、古墳の光は再び輝きを増した。

恐れをなした町長は、役場の屋上から 青白い光 を見上げ、震える声で叫んだ。

「申し訳ありません!すぐに工事を中止します!」

すると、不思議なことに光は **ゆっくりと消えていった。**

数日後、町は再び平穏を取り戻し、職員たちも病から回復した。しかし、町長だけは夜ごと 光に呼ばれる夢を見続けたという。

ある満月の夜、町長はふらふらと古墳の方へ歩いて行き、そのまま 二度と姿を見せることはなかった。

後日談:

町の人々は古墳に新たな祠を建て、「光の守り神」として祀るようになった。夜、古墳の上にわずかな光が揺れるのを見る者もいたが、誰も怖がることはなかった。ただひとつ、祠の傍らには町長の名が刻まれた石碑がひっそりと置かれているという。

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古墳の光(築山古墳) 三分堂 旅人(さんぶんどう たびと) @Sanbundou

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