幼女型聖水器試作型CC01
ひす
第1話 桜の花汁
女の全盛期は10歳である。
個人差はあるが、これは世のことわりだ。
異論は決して認めない。
そして、幼女と呼べる限界も10歳である。
まあ、このあたりは明確な定義はないな…
だが!女の全盛期は10歳である!
腐りゆく前の果実が美味いように、散りゆく花が美しいように、年齢が2桁に乗ってしまった幼女こそ至高の存在なのだよ。
そこから先は悲惨なものだ。
迫りくる老いに抗い続ける日々のみが待ち受けている。
化粧で自らを取り繕っても、美容整形で自らを偽っても、それは真には届かない。
私が残酷な真実を知ろうとも、人間の成長を止めることはできない。
いかに私が天才科学者であろうとも。
しかし、人間でなければ奇跡の存在を生み出すことはできる。
永遠の10歳女児という夢をね。
「我ながら素晴らしい」
高さ140センチ、重さ34キロ、10歳女児の平均身長と体重を再現した芸術が私の目の前にある。
絶妙に膨らみを見せたバスト、適度な肉感と華奢さの均衡が取れたウエスト、一抹の汚れもない無毛のワレメ、どこを切り取っても完璧だ。
無論、彼女は人間ではない。
だが、指からするりと抜ける長い桃色の髪も、人工物とは思えない肌の質感も、全盛期を生きる本物と何ら遜色はない。
「いよいよ完成しましたね。長かった…」
私の半分も完成に貢献していない助手が、感慨深そうに私の人生の集大成とも言える傑作を見つめる。
27歳の女という、日に焼けて売り物にならないピーマンより需要がない哀れな存在だ。
髪の色もそれにシンクロしているかのように、何とも微妙な茶色というのがまた哀れさを助長している。
年増だけどぼちぼち有能だから採用しているに過ぎない。
天才たる私へのリスペクトにも欠け、屁理屈を並べて生意気な女である。
いつでもクビにする覚悟できている女だが、どうにも許せないことが起きていることに私は今気づいた。
「その髪はなんだ?20年遅いわ。それは間接的な辞表と解釈してよいな?」
「えーっ?可愛くないですか!?」
「ツインテールをしていいのは10歳までだ。今すぐ腹を斬るか、即刻辞職するか死ね」
「博士だってうっとうしい長髪とっとと切ったほうがいいですよ。切らないなら廬山昇龍覇でも打ってろ」
まったく、2コ下の分際で生意気な女だ。
中学生の時の2コ上の恐ろしさを忘れたのか?
「まあいい。おまえのそれ、外して彼女も同じようにしてくれ。物は悪くないからな、物は」
何かまだ100文字くらい言いたさそうな顔をして、助手は私の芸術の髪を丁寧に結んでいく。
可愛さ1.5倍増しといったところか。
美幼女度で言えば本物以上と言える。
さて、そろそろ彼女の魅力は外見のみに非ずというところをテストしていくか。
「おはよう、さくら」
頭を3回撫で、おはようの言葉で彼女の電源が入る。
電源を切る時は、同様に頭を3回撫でておやすみと言うだけのシンプルな設計だ。
任意の名前を呼ぶと、それが彼女の名前として認証される。
ああああとかでも認証はされるが、そんな昭和のドラクエをプレイした小学生のようなことをする人間はいないだろう。
「おはよう、お兄ちゃん」
目に映る人間の性別を判断する機能は正常のようだ。私のような中性的なイケメンもきっちりは判別できるのは、充分に合格点と言えるだろう。
「お姉ちゃんもおはよう」
ブスでも性別がきちんと判別できる。
私のプログラムの優秀さの賜物だ。
性別によってお兄ちゃんとお姉ちゃんを使い分けるが、名前を呼んでもらいたい場合は、任意の名前を学習させることで好きに呼んでもらえる嬉しい機能も搭載している。
なお、人間を正確に認識できるのは2人までだ。
さくらの声は、助手が録音した声を私が加工したものを採用している。
すぐに取って代わられるアイドル売りの下賎な声優などに金を払って起用する理由もない。
開発費だって安くはない。
むしろ金策に困ったくらいには高い。
私の技術にかかれば、年増の声もリアルな可愛らしい女児ボイスに変換できるのだよ。
削れる要素は削らないとやってられない。
「めっちゃ可愛いですね!声とか、特に声とか!」
「そうだな。おまえの声を編集する地獄のような日々が報われるほどには可愛いな」
「で、そもそもいくらで売るんですか?」
「8000万で考えている」
「いや高すぎるでしょ!買うのいるの!?」
「案ずるな。既に売約済みだ」
「あたしらが言うのもなんですけど…闇深いですね」
「あのぉ、さくら、お水飲みたいな」
これは貯水タンクの水が不足していることを知らせる音声である。
別に水が燃料なわけではない。
水で34キロの物体を喋らせて動かせるわけもない。
重量の多くを占めるバッテリーが動力だ。
「おいブス、給水だ持ってこい」
「ブスじゃないから持ってきませんー」
「じゃあちょっとだけ可愛いババア、水持ってこい」
「なかなか素直じゃないですか」
妙に嬉しそうにしながら助手が2リットルのペットボトルを持ってくる。
中身はただの水道水だ。
それを手渡されたさくらは、一気に口から注ぎ込んでいく。
「やっぱりお水が最強だね。鉄臭い水道水が世界で一番おいしい飲み物だよ」
与えるものは、お茶でも牛乳でも、ジュースでもアルコールでも問題はない。
だが、内部の浄化装置に負荷がかかるので、与えるものは水を推奨している。
好意的な相手には、好きなものを与えてあげようとするのが人間の心理というもの。
説明書も読まないでゲームを始めてしまうタイプにも配慮しているというわけだ。
「そうだなさくら。なんだかんだ水が最高に美味いのだ」
「でも、おしっこしたくなっちゃった」
貯水タンクの最大容量は2リットル。
これに達すると発する音声である。
この意味はそのままだ。
さくらは単なる幼女型のお喋りロボットではない。
可愛い幼女のおしっこを飲みたいという夢を叶えてくれる幼女型聖水器なのだ。
そして、私の幼女しか愛せない悲しみを受け入れてくれる存在でもある。
幼女型聖水器試作型CC01、通称さくら。
使い方は難しいものではない。
触れるだけで幸せになれる質感のワレメをまず拡げる。
指を差し込むことすら躊躇われるほど狭い膣があるが、ここは丁重に扱わないと重大な故障に繋がるので注意すべし。
なお、私が意図しない使用をして、修理不能の重大な故障が発生した際は、ユーザーの精神を破壊するような台詞を用意した。
この音声を幼女型聖水器が発することがないよう、私は心からそれを祈る。
そして、注目するのがその上の尿道口だが、ここも安易に触れてはいけない。
放水の際に方向がズレる可能性があるためだ。
本物の幼女と相違ない外見をしていても、さくらは精密機械である。
メンテナンスは電源を切り、綿棒などで丁寧にすることを心がけよ。
本体から見て左の乳首を触ると冷水になり、右の乳首を触ると温水になる。
触らない場合は常温となる。
絶妙な膨らみ具合や乳首の質感も、当然ながら私の拘りポイントだ。
へその部分を3秒ほじると腹部が観音式に開く。
フィルターの交換や、着色料の付与、好みの味に変えるフレーバーの調整も可能だ。
バッテリーもここに内蔵されていて、交換もできる。
肝心の放水の方法だが、包皮に隠された小さな突起に3回触る。
この質感を再現するのには苦労した。
徐々に硬くなっていく仕様にもトライしたが、私の技術力をしてもそれは難しかった。
次世代機では進化を求められるから、これまた悩ましい日々になるだろうな。
「そこ触ったら、おしっこ出ちゃうよぉ…」
これが1回触った時の音声だ。
羞恥を感じてこそ美学があり、その時々の表情にはかなりの金と時間を費やした。
感情が顔に出にくい人間くらいのクオリティはあり、現状ではこのあたりが落とし所か。
「んん…もぅ…そんなにさくらのおしっこ飲みたいのぉ…?」
「いやー、めちゃシコですねこれ」
「おまえ女だろう。その表現はないわ」
「じゃあー、ぐうシコですね!」
「何でもいいからグラス用意しろブス。ブランデーグラスだぞブス。2つだぞブス」
「ブスじゃないけど持ってきます!」
ひどく醜いノイズが入ったが、2回目の音声は個人的になかなか気に入っている。
不満な点とすれば、それが鼻息荒く迅速にグラスを構えている助手の発案である点だな。
「恥ずかしいけど…お兄ちゃんとお姉ちゃんなら…いいよ…?」
3回目の音声もまた、聞く者を悦楽にいざなう魔性の言葉と言って過言ではない。
1回あたり200ミリリットルに固定された黄色い浄水として、グラスに注がれていく。
素晴らしいの一言に尽きる。
参考資料として数多の動画を視聴してきたが、これほどまでの享楽に耽る幼女は一握りしかいない。
「プロトタイプですけど、完成した記念すべき初搾りです。どうぞ博士」
「おまえもなかなかいいところあるな」
「私が幼女化する毒とか仕込まれてても嫌ですから。いや、それはいいな。幼女になれるとか最高だな」
「幼女になってもブスではたかが知れているわ。まあ、ワンチャンにかけていっとけ」
「それでは、お言葉に甘えまして…」
神妙に正座なんかして、香りなんかを感じながら助手はグラスを傾ける。
本格派のユーザーの希望を叶えるべく、匂いを変えるオプションも別売りで販売する予定ではある。
現実ではこの女飲んでいるのは、ただ浄化された黄色い水道水なのだがな。
「いやー、いいですねー。風情がある。もうトロトロですよコレ。全然小さくなってないけど身体」
「そんなバグ起きたら発売停止だよ、たわけが」
「幼女になってすんげぇオナニーしたかったなぁ」
「さくら、もっとおしっこしたいよぉ…」
製品化に向けて試作型のテストをしているというのに、参考にもならないレビューだ。
幼女への想いだけで私に付き従う変態に任せた私の落ち度と認めざるを得ない。
さくらの貯水タンクにはまだ9回分の水が残っている。
他の機能も正常に動作するか試してみよう。
「お兄ちゃん、さくらのおしっこ飲みたいな」
「じゃあもう1回…するね…」
美しい溝を拡げることもなく、その奥で起動の行程を踏むこともなく、さくらは私の声に反応してグラスを黄色く満たしてくれた。
ギミックを楽しむ時間がない場合は、このように問いかけのみで聖水を提供してくれる機能もある。
紛れもなくただの水の味だが、私が生涯で飲んだことのある飲み物の中で最も美味であると言い切れる。
こんな可愛い幼女が自分のために出してくれたというこの事実が素晴らしい。
ただひとつ、さくらは妙に扇情的な顔をしていた。
誤差レベルではあれど、1回目にしたものとは違う。
私のプログラムにはない表情だ。
愛と聖水に満ち溢れた日々を送るべく、人工知能も搭載したのだが、早くも何か学習したということか。
「もっとお姉ちゃんにもおしっこ飲ませて!」
「そんなにしたら、いっぱい出ちゃうよぉ…」
愛欲のままに助手が振動と音声で二重に作動させたばかりに、さくらはグラスから溢れる量の放水をしてしまった。
「しっかり拭いとけよブス」
「いや、舐め取るので大丈夫です」
「心までブスとは感心するな」
「さくら、まだおしっこ出るよ…?」
「じゃあ口にダイレクトで!」
「お姉ちゃんエッチだから、全部しちゃうね…?」
「最後に給水しとけよ、変態ブス」
さくらに水の残量の全てを放水する機能はない。
今の助手の言葉では、6回分残っているさくらの貯水タンクを空にはできないはず。
人工知能の学習能力は、残念ながらそこまで高度なものではないはずだが、まだテストの余地はかなりありそうだ。
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