ビビり魔王、冒険者になる
藤谷葵
第1話 魔王ビビマオール
我の名はビビマオール。この世界の魔王である。
だが、我のステータス画面がおかしい……。
称号が『魔王』と『魔族に崇拝される者』の二つがあるが、これはまあ納得。
ステータスの幸運以外の全ての数値が十台とかおかしくない? 幸運は∞だと?
魔王になっていずれ勇者が現れたら討伐される運命のどこが幸運∞だ?
それに魔王と言えばラスボスだろ? ステータス十台だと一番弱いスライムにも勝てなくない?
しかも、スキルもバグっているのか?
『スキル名:勇者みたいな感じ』
『効果:魔物や魔族に対して物理攻撃力や物理防御力、魔法攻撃力に魔法耐性、状態異常耐性が上昇する』
いや、人間と戦う場合は? 誰もツッコミを入れる人がいないので、自分でツッコんでおく。
そんなことを日々悶々と考えていると突然、誰かが我の部屋のドアを乱暴に開けて、開口一番に驚くべきことを言い出した。
「魔王様! 勇者を名乗るものが現れました!」
その闖入者は大声で叫んだ。
我はドアが勢いよく開いた音と訪問者の叫び声にビクッ! っとした。我の部下だった。
平静を装いつつ我は「落ち着け、どういうことか詳しく話せ」と言った。
内心落ち着いていないのは我の方だが……。
「人間達が召喚魔法で異世界人を勇者として召喚したようです! そして魔王様を討伐するとのことです!」
「……そうか、わかった。直ちにこの城の警備レベルを最大限にしろ」
我は部下に伝えた。
「はっ! かしこまりました。それと魔王様自ら出向いて勇者が強くなる前に倒してしまってはいかがでしょうか?」
こいつ、とんでもないことを言い出した。だが、平静を装う
我は部下に対してくるりと背を向けて言う。
「いや、わざわざ我が出るまでもない。そなた達なら勇者達を倒せると信じている。それと勇者が現れたのならば、今後この部屋は誰であろうが立ち入り禁止とする。勇者たちが何らかの方法で魔族に偽装して侵入する可能性もある」
そう言うと部下は納得した。
「はっ! かしこまりました。他の者たちにも伝えておきます。我々が必ず勇者達を倒します! 期待してお待ち下さい!」
そう言い残し、我の部屋を出て行った。
我は部下が部屋を出て扉を閉めた後に『ヤバい!!人間どもは代々魔王が現れると勇者を召喚して魔王を倒させて、また勇者を元の世界に戻している。このパターンだと絶対我も殺される……』と冷や汗を流しながら青ざめていた。
(我は魔王になりたかったわけではなく、称号のせいで勝手に魔王になってただけだし、人間を襲ってるのは血気盛んな部下達で、我がそれとなく人間を殺さないように言ってもいつも違う解釈されるだけだし……)
どうしようと部屋をウロウロ歩きながら考えていると『人間どもに紛れて冒険者の振りして勇者達の行動を探るか?』と考えた。
さすが我は頭良いな? と思いつつ早速スキルを使って人間に擬態して見る。
そして部屋にある鏡を見て悩んだ。
(この姿なら人間の若者の男ぐらいに見えるか?)
人間の姿は部下を通して魔法水晶玉に映ったのを見た程度しかない。そもそも城の中に引き籠りなので、魔族や魔物もろくに知らなかったりする。
とりあえず我は勇者が召喚された城の近くに転移魔法を使用して移動した。
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