猫との日常

石神菜々子、帰宅する。

　二十七歳の私は、服に名札を留めた。

　名札には、「石神菜々子（いしかみななこ）」と書かれている。

　定時なみの時間で、家に帰る。

　終電で帰宅した回数……１！

　これは、二十一歳の時ヤンキーにからまれて、飲み屋横丁をぶらぶらと歩いた時だ。（尤（もっと）も、途中から私の方もノってきたのだが。）

　ある日のこと。

　『菜々子、今日は終電で帰れ』と神様が呼んでるぅ……

　と私は思った。

　店長が『厨二病（ちゅうにびょう）をこじらせるな、このフリーター」と私を叱った。

「まぁいいか。今日は終電で帰ろ」

　終電で帰宅した回数、という名前のカウントが、１増えて２になった。

　なんだか勿体無い感じがしたけど……

　まあいっか。

　こうして私は終電で帰宅した。

　空が暗くて、どうしようもなかったけれど。