美男学者のマル秘部室♡

沼津平成

プロローグ

 急がなきゃ……!

 と言いながら走っている自分をどこか冷たい目で見ていた。

 私は、天城 天音てんじょう あまね

 ニッピー学園1年の少女。

 このおかしな名前の学園は世に言う中高一貫校だ。

 なんだニッピーって!

 由来は私もわからない。しかし校門には縦書きで「ニッピー学園」と彫られている。また校長も全校集会などでたびたび「ニッピー学園」という語を使っている。

 そしてそれ以外にも私にとって大変なところがあった。

 小学校では割と陽キャだったはずなのに、

 今のところ友達と呼べるのは2年の倉部 サキくらべ サキ先輩、ただ1人だ。しかも先輩というのはいくら親しくても話題に限度がある。

 私も進級したら、そんな一年生を救えるかな……。

 

 寮生で、寮に嫌というほど大きな学園の地図が貼ってあるというのに、いまだに学園の何がどこにあるのかの把握が曖昧な私は、(多分6年になっても曖昧だろう。)いま西棟と東棟を繋ぐ吹き抜け廊下を走っていた。本当は旧館がある。旧館の真ん中に倒れた柱のようにある吹き抜け廊下。

 このまま進めば職員室があるはず——あれ? ここ見たことないな……。

 

「おーい、誰かいるんでしょ〜!?」


 その声は虚しく遠くにこだました。

 私は泣き崩れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

美男学者のマル秘部室♡ 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ