クールジャパンのホットな友情
浅野エミイ
クールジャパンのホットな友情
「よっ、ルイ」
「Hi! 武」
今日はフランスのルイと久々のチャットだ。ルイは3年前、僕の家にホームステイしていた留学生。日本の文化が大好きで、それを研究しているとか。僕とは10歳も離れているけど、こうしてたまに今もチャットする間柄だ。
現在夜の20:00。フランスはちょうど正午くらいか。ルイはたまにこうして自宅からチャットしようと連絡をくれる。話す内容はたわいもないことだ。というか、基本的に日本のアニメとゲームの話しかしない。なんというか……つまり僕はルイの貴重な日本の『オタ友』といったところだろう。
ルイの部屋には電子の歌姫の枕カバーやポスターが壁全面に貼られているし、パソコンの横にもフィギュアが置いてある。今日着ているのもゲームキャラのTシャツだ。
「それでね、ゲームのあの衣装、武はどう思うかなーと思って。ボク的には最高だったんだけど」
ルイがハマっているゲーム。それは、日本のアイドルたちを育成するリズムゲームなんだけど、僕もやっているからこうやってたまに意見を聞かれる。僕の意見を聞いて何になるのかは謎だけど、ただ単に萌え語りがしたいだけだとは思う。
「スチームパンク系って意外となかったよね。新鮮だった」
「だよネ! やっぱりそう思うよネ! ボク的にはユカちゃんのポーチがすごくかわいかった! アレをフランスのオタ友にコスプレしてもらいたいんだけど……」
流暢な日本語でペラペラとオタ話をするルイ。本当に日本文化……というか、アニメやゲームが好きなんだなと思ったが、そうだ。僕はルイに聞かないといけないことがあったんだ。
ルイのマシンガントークが止むまで待とうと、僕は夜食用のお湯を入れた緑のたぬきをパソコンの前に出してすすり出す。天ぷら、おつゆに使った部分はふにゃっとしてるけど、表面はカリッとしていて香ばしい。うん、うまい。そんなことを考えていたら、ルイのマシンガントークがいつの間にか止んでいた。
「……」
「ルイ? どうかした?」
「緑のたぬきじゃない!!」
「ん? うん、そうだけど」
「いいなぁぁぁぁ!!!」
ルイの話では、フランスでも一応『すごく探せば』売っているらしいが、なかなか見つからないとのこと。そうだよな、日本のカップ麺なんて、なかなか売っているものじゃないのだろう。
「緑のたぬき、相変わらず夜食にしてるんだネ、武は」
「うん、手軽に食べられるからね」
「ホームステイしていたときを思い出すよ」
あのとき、ルイと一緒によく夜のコンビニに行って買ってきたんだっけ。そして、夜食を食べたあとに深夜アニメを見ていて、お母さんに怒られて……ルイは大学の講義に寝坊しそうになったりして。
「楽しかったよ、キミの家でのホームステイは」
「……また、緑のたぬき食べたい?」
「もちろんさ! 初めてインスタントのテンプラを見た時はびっくりしたし、温かいそばもおいしかった! スープもだしが効いていて……でも、何より深夜アニメの前に食べるというシチュエーションが最高だったね。フランスでもできないかなぁ……」
「そっか」
ルイに聞きたかったこと。それはもうすぐ誕生日だから、何か欲しいものはあるかということだったんだけど、これで決まりだな。
「もうすぐできるようになるよ」
「え?」
「いや、なんでもない」
僕はルイに緑のたぬきの箱詰めをプレゼントすることをひっそりと心に決めた。こうして日本の味は、海外の人にも広まっていくんだろうな。
喜んで緑のたぬきを食べながらチャットしてくるルイを見るが楽しみだ――。
クールジャパンのホットな友情 浅野エミイ @e31_asano
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