第5章 「広がる評判」

「リノア様、今日も大盛況ですわ」

研究室の受付を手伝うクレアが嬉しそうに報告する。

かつての敵対関係など嘘のように、今では私の良き助手となっていた。


「本当に賑やかね...別に商売ではないのだけれども。」

ソフィアとアンジェリカも日々顔を出すようになり、

身分の壁を超えた不思議な交流が生まれていた。


「リノア、この新作のマカロンを持ってきたよ」

アレクサンダー王子が、街で人気の菓子店の箱を手に現れる。

手の傷が完治して以来、彼は頻繁に研究室を訪れるようになった。


「まあ、ありがとうございます」

「皆で食べましょう」

クレアが紅茶を用意する中、アンジェリカが優雅にカップを持ち上げる。

かつての冷たい態度は影を潜め、今では打ち解けた雰囲気だ。


「リノア様!」

突然の来訪者に、全員が振り向く。


「騎士団長?」

「隊員たちの深刻な悩みでご相談に」

ローレンス騎士団長が真剣な表情で説明を始める。


「長期訓練での日焼けが深刻で、隊員の士気に関わるほどで...」

「日焼け止め...ですか」

私の脳裏に、前世の知識が蘇る。


「面白そうね。新しいものを開発してみましょう」

研究室は再び活気に満ちた。この世界の素材と、前世の科学知識を組み合わせる。

「これを『S&P500』と名付けましょう」

完成した日焼け止めは、驚異的な効果を発揮した。

SPF500相当の protection factor。この世界では前例のない高い防御力だった。

それは日焼けだけでなく防御魔法としても効果があった。


「これは...すごい!」

試験運用に参加した騎士団員たちが歓声を上げる。


「リノア様、我が騎士団の救世主です!」

ローレンス団長が深々と頭を下げた。


その後、街に出るたびに騎士団員たちが敬礼する光景が日常となった。


「第一王子よりもリノア様に敬礼が多いですね」

クレアが楽しそうに笑う。

「まったく、困ったものね」

私は苦笑いを浮かべながら、この状況を楽しんでいた。


研究室では、貴族も平民も関係なく、皆が自由に語り合う。

それは、この身分社会では考えられなかった光景。


「でも、これでいいのよね」

私は窓辺に立ち、広がる学院の景色を眺めた。

科学と魔法。身分の壁を越えた交流。全てが、新しい未来への一歩となっている。


「次は何を作りましょうか、リノア様」

クレアの問いかけに、私は優しく微笑んだ。


この世界は、確実に変わり始めていた。

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