元勇者の修羅、現代最強の傭兵になる
魔石収集家
1 並行世界「チキュウ」
俺が目を開けたとき、そこは見慣れた地球ではなかった。
空気の匂い、砂の感触、青空の広がり。
一見すれば、地球と見紛うほどだ。
だが、俺の感覚が告げていた。
ここは別の世界だと。
並行世界「チキュウ」
戦いを求め、俺は自らの魔法でこの地に転移した。
胸を高鳴らせながら、大地に足を踏みしめた瞬間から、全てが俺の期待を超えるものだった。
この世界は東と西に二分され、全面戦争の渦中にあった。
戦車、航空機、無人機が暴れ回り、街を焼き払い、大地を血と炎で覆い尽くしていた。
俺が立ち尽くす荒野の先では、戦火の音が大地に響いていた。
『修羅、この光景がお主を満たすか?』
頭の中に響く声。
黒炎の霊刃に宿る亜神、神威からの念話だ。
『これだ。これこそ俺が求めていたものだ。』
俺は神威の重さを感じながら歩を進めた。
大地には無数の兵士の遺体が散らばり、赤黒い血が焼けた砂に染み込んでいた。
空を舞う無人機が爆音を響かせ、戦車の砲弾が地を揺るがしている。
だが、俺の胸の中にあるのは歓喜だけだった。
『この世界なら退屈しない。』
俺は前方に広がる戦火を見据えた。
西陣営の巨大な戦車が列を成し、その上空には無人機が編隊を組んでいる。
そして、それを迎え撃つ東陣営の傭兵団。
彼らは最前線で戦い、命を燃やしていた。
その光景を目にした瞬間、俺の中で何かが弾けた。
ここに入れば、戦い放題だ。
俺はそう確信し、傭兵団の本部を目指した。
本部に到着した俺を迎えたのは、血と鉄の匂いが漂う粗末な施設だった。
中には屈強な男たちが集まり、それぞれが武器の手入れや訓練に励んでいた。
その中で目を引いたのは三人だ。
最初に声をかけてきたのは、短髪で傷だらけの顔をした男。
「新入りか?名前は?」
「修羅だ。」
「俺はガロン。戦場では突っ込み役だ」
その隣で黙々と武器を磨いていたのは、長身で痩せた男。
視線だけをこちらに向ける。
「そいつはリック。狙撃が得意だが口数は少ない。お前みたいなのが好きかどうかは分からんがな。」
最後に現れたのは、年齢不詳の女性。
短い髪を揺らしながら、挑発的な笑みを浮かべている。
「私はマリア。ここで唯一まともな人間と言っておくわ。あんた、本当に戦いたいの?」
「それ以外の理由でここに来る奴がいるのか?」
三人は俺を値踏みするように見つめた後、互いに笑い声を上げた。
その目は、試すつもりであることを告げていた。
「じゃあ、ルールに従ってもらおうか。入団試験だ。」
傭兵団の規則に従い、俺は試験場に立った。
目の前には24人の傭兵たち。
それぞれが武器を構え、俺を取り囲んでいた。
『どうする、修羅』
『命は取らない。』
試験の合図が響き渡り、全てが動き出した。
俺は周囲に探知魔法を展開し、目立った動きを察知し続けながら闘う。
最初に飛び込んできたガロンを含めた4人の兵士。
俺はその動きを感じ取った瞬間、足を踏み出した。
左手でナイフを弾き、膝でガロンの腹を突き上げる。
瞬間、地面に崩れ落ち動かなくなった。
次の兵士が目の前に現れる。
身体をひねり、刃をかわしながら一歩踏み込み、片手で顔面を打ち抜く。
そのまま意識を失い、倒れた。
さらに数人が接近するが、その足音を聞き逃さない。
片足で空気を蹴り上げ、宙に浮くようにして、振り下ろされた武器を目の前で避けながら踏み込む。
そのまま、身をひねりつつ黒炎の霊刃を横に振る。
その一振りで、二人が次々と吹き飛び、残りの兵士もその衝撃で立ちすくんだ瞬間、右足で床を蹴って跳びかかる。
横合いから蹴りを入れた男が腰を砕け、倒れる。
連続した動きの中で流れる水のように、次々と兵士を倒していく。
特殊なゴム弾が飛んできたが、空中で素早く反転し無駄なく一回転して銃弾を避け、次の兵士に一気に近づく。
瞬時にその肩を掴み、腕をひねりながら後ろに投げ飛ばす。
地面に叩きつけられた兵士はそのまま動かなくなった。
面倒になった俺は
背後に閃光魔法を放ち傭兵たちの視覚を奪い
魔力を乗せた黒炎の霊刃を一閃
残っていたリックとマリアを含めた傭兵たちを吹き飛ばす!
その時、壮年の男--バルカが近づき、震える声で言った。
「アンタこんな力を…これ現実なのか…」
目の前で繰り広げられた戦闘に、ただ驚愕し、信じられない思いを隠せなかった。
少し顔を引き締め、続けた。
「ウチにきてくれ!是非!!金ならいくらでも出す!最新の兵器だって使い放題、女も食い物も、好きなだけ選べる!」
バルカの言葉が響く中、俺は冷たく告げた。
「女はいらん、男もいらん。俺はどうも記憶喪失のようだから…戦況と兵器の情報を可能な限り提供しろ、戦闘力が高い傭兵や兵士の事も教えろ」
俺が求めているのは、戦いだけだった。
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