第2話

 俺は静岡にある介護施設『あざみ園』で働いていたが、パワハラや給与を減らされた上、ヘルニアを患い辞めた。


 続き:あざみ園での日々


静岡にある介護施設「あざみ園」での勤務は、最初は何もかもが新鮮で、やりがいを感じていた。しかし、日が経つにつれ、その現実は徐々に厳しくなっていった。


職場環境は、思っていた以上に過酷だった。スタッフ間の人間関係も難しく、上司からのパワハラが次第にエスカレートしていった。言葉の暴力、無視、理不尽な要求が日常となり、最初は我慢していたものの、それが精神的にも身体的にも大きな負担となった。


「あざみ園」は経営の問題も抱えており、給与が度々減らされることが続いた。手取り額は減少し、残業やサービス残業が当たり前のように発生し、生活は次第に苦しくなっていった。スタッフの負担も増え、仕事の質が低下し、利用者へのケアが疎かになることもあった。


そして、最も深刻だったのは、体調が悪化したことだ。重い物を持ち上げたり、無理な姿勢で長時間作業をしているうちに、腰に激しい痛みを感じるようになった。最初は軽い腰痛だと思い、無理して続けていたが、次第に痛みは酷くなり、動けなくなるほどに。診断結果は「ヘルニア」だった。


医師からは安静が必要だと言われ、すぐに仕事を休むことを勧められた。しかし、あざみ園での勤務を続けることは、物理的にも精神的にも無理があることを実感した。結局、退職を決意し、あざみ園を去ることになった。


退職後も、あざみ園での経験は忘れがたかった。パワハラや給与の削減、過重労働が積み重なっていったあの頃を振り返るたび、悔しさや無力感が胸を締め付けた。それでも、何よりも自分の身体を壊してしまったことが最もつらかった。


新しい道を歩む


退職後、しばらくは治療と休養に専念することにした。ヘルニアの治療は時間がかかり、痛みが完全に取れるまでには数ヶ月かかった。それでも、身体が回復していくにつれ、少しずつ前向きな気持ちが湧いてきた。


その間、介護の世界を離れるかどうか、悩んだ。介護という仕事が持つやりがいと、人々のために役立つという意義は変わらず大切に思っていたが、あの職場で経験したことが、もう一度同じような環境で働くことに対して強い不安を抱かせていた。


それでも、介護業界に対する思いは消えなかった。そこで、新たな方向性を見つけようと決心し、介護職以外の仕事に挑戦することにした。営業職やカスタマーサポート、さらに福祉施設の経営管理など、違った分野で自分のスキルを生かせる方法を模索していった。


この時、自分の心の中で「介護は人の命を預かる大切な仕事だからこそ、働く環境がしっかりと整っていなければいけない」という思いが強くなった。多くの人が介護職に従事しているが、その多くが過酷な労働環境に晒されている現実を、変えていきたいという願いが芽生えた。


新たな希望


数ヶ月後、私はついに新しい職場を見つけることができた。福祉関連の企業で、介護現場の改善に取り組む活動を行っている団体だった。この新しい職場では、以前のようなパワハラや過重労働の問題はなく、スタッフ一人一人が大切にされていた。給与も安定しており、福利厚生も充実していた。何よりも、利用者の尊厳を守ることが最優先にされている職場で、再び介護の仕事に携わることができることに感謝した。


自分の体調が完全に回復したわけではなかったが、新しい環境で働くことができるという安心感と希望が、再び自分のエネルギーを引き出してくれた。そして、この新しい職場で、かつての自分と同じように苦しんでいる介護職員を支える立場になりたいと強く思った。


あざみ園での辛い経験があったからこそ、今の自分がいる。あの時感じた不安や苦しみを忘れず、今度は他の人々がそのような思いをしなくて済むような職場作りに貢献したいと心に誓った。


再び一歩を踏み出し、今度はもっと大きな意味で介護業界を変える力になれるよう、自分の道を進んでいこうと思った。


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