『異世界薬師の研究室』 ~天才女性研究者の魔法薬学革命~

ソコニ

第1話「天才研究者の転生」



「実験、開始します」


研究所の白い天井を見上げながら、私は静かに呟いた。クリーンルーム内の空気は、いつもより重く感じる。


「速水先生、本当に大丈夫ですか?」


助手の山田君が心配そうな声を上げる。確かに、今回の実験はリスクが高い。だが、もう待っている時間はない。


「大丈夫よ。これが成功すれば、必ず妹を救えるはず」


私、速水美咲。25歳、遺伝子工学の研究者。そして、難病に苦しむ妹を持つ姉。


青く輝く溶液を見つめながら、実験装置のスイッチを入れた。するとその瞬間—予想外の反応が始まった。青い光が急速に増幅していく。


「先生、危険です!」


山田君の叫び声が聞こえた。だが、もう遅い。まばゆい光が実験室を包み込み、私の意識が徐々に遠のいていく。


* * *


「お嬢さん、大丈夫かい?」


耳に届く声は、どこか温かみのある老人の声。目を開けると、そこは見知らぬ森の中だった。木漏れ日が差し込み、周りには見たことのない植物が生い茂っている。


「ここはグリーンリーフの森さ。珍しい薬草が採れる場所として有名なんだよ」


薬草?その言葉に私の研究者としての好奇心が刺激された。自分の体を見下ろすと、若返っている。それに服装も見知らぬもの。


「あんたは薬師の見習いだろ?その服装からして」


老人の言葉に、私は自分の服をよく見た。確かに、薬草を採取するのに適した作りの服を着ている。腰には小さな薬草バッグ。


(異世界...転生...?)


そんな単語が脳裏をよぎる。にわかには信じがたい状況だが、研究者である私の観察眼は、この状況が現実であることを示していた。


「あら、これは...」


視界に飛び込んできたのは、青く発光する美しい花。その特徴は、地球上のどの植物とも異なっている。


「月明草という珍しい薬草さ。夜になると青白く光る不思議な花でね。鎮痛効果があるんだが、調合を間違えると患者が光り出すという厄介な代物なんだ」


(患者が...光る?)


私は思わず目を見開いた。そんな特性を持つ植物は、前世では聞いたことがない。試しに、懐から取り出した小さなノートに観察結果を記していく。


「面白い娘さんだ。よかったら、この老人の薬房に来ないかい?」


これは、チャンスかもしれない。


「ぜひお願いします!」


私の返事に、老人は満足げに頷いた。ここから私の、異世界薬師としての物語が始まる。

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