あの子達は......進むのね。
「あの子達は……進むのね。」
広く澄み渡る星空の中、小さく抑揚のない声で呟いた。まるで深海を思わせる深い深い藍色を纏う少女のような”ナニカ”は尖塔の頂上で遠くを見つめている。彼女は星が手に届きそうな程近い夜空を見上げ溜息を吐いた。
「しょうがない、と言えばしょうがないのかしら?」
彼女は暗い水晶の羽を広げながら、視線を忙しなくあたりへ回す。その姿はまるでこの世の全てが見えているようだ。また何処か超越者じみた、人外じみた底知れなさを感じられることだろう。
「個人的にはあの子達とは戦いたくなかったんだけど。いや、いっそあの子に……いや無理な望みは捨てるべきね。」
声に感情は乗っているのとは裏腹に、その表情には一切の変化がない。それは、いわば機械じみたものを感じさせている。
「……今から行けばギリギリ間に合うかな? まあ、間に合わなくても回収し直せばいいだけ。」
その小さな背丈を大きく超える羽を広げきる。藍の髪に藍の衣装、藍に包まれたその姿には底しれない恐ろしさと共に美しさを感じさせる。その美しさは何者にも揺るがされない、まるで自然を思わせる泰然とした雰囲気からのものだろう。
「じゃあ、行こうか。ごめんだけど”それ”を使わせるわけにはいかないんだ。」
そうして彼女は勢いよく飛び立った。己が使命を果たすために。彼女は後ろに冥い光を残し、真っ直ぐと”それ”に近づく数人の10代ぐらいの男女を無表情に見つめている。
「いくら”それ”が君たちの希望なのだとしても、事象の改変なんて、オーバーテクノロジーすぎる。あれはこの世から出しては行けないものだ。それを分かってちょうだい。」
イクシズが一角たる《
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