不定期ショートショート(熊埜御堂ディアブロ)

熊埜御堂ディアブロ

仕事ができない課長

 課長を馬鹿にする人は誰もいなかった。異動間もない私は違和感を抱いた。


 課長は仕事がまったくできず、成績すらあげられない。誰かと親しく話をしている訳でもなければ、机に座って、PCの前でずっと唸り続けている。

 私は課長の部下だったから、課長の分の仕事もこなした。最初は課長も喜んでいたが、ある一つの仕事だけは決して私に渡さなかった。


 いつしか私は課長を無視して、課長の分の仕事もこなしていた。PCの前で唸る課長に、消化できないなら寄こしてくれと話したが、それを頑なに拒絶する。私はイライラして課長に強くあたってしまった。


 ある時部長が私を呼んで、課長を悪く思わないでほしいと密談してきた。私は課長が仕事ができないから、課長の仕事もしているんだ、課長なんか降格させて、私を課長にすればいい、そう部長に愚痴をこぼした。

 そうかそうか、君はそういう事を言う奴なのか、それなら課長の仕事をさせてやろう。部長はため息と共にその場を去った。


 翌日、部長は課長に話をすると、課長は泣いて私にありがとうと告げてくる。そして私は課長となり、課長が抱えていたひとつの仕事は、私の担当として扱えることになった。

 すぐに消化してやるぞと、私は意気込み内容を見た。課長の家族が全員事故でなくなり、しかし生命保険がどうやっても適用できない、そんな案件が目の前にあった。

 私は以後、仕事が一切進まなくなり、周囲からは仕事ができない課長と誹りを受けるようになった。

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