ヤンキーJK、士書になる

阿弥陀乃トンマージ

公園での遭遇

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「ったく……」

 綺麗な金髪のロングヘアをかきあげながら、ミニスカート姿の女子高生が公園のベンチにドカッと腰を下ろす。その丈の短いスカート、シャツを少しはだけさせているところを見ると、校則というものを遵守するつもりはあまりないらしい。

「なんで受からねえんだよ……!」

 金髪JKは頬杖をつきながら、首を傾げる。

「高校生になったんだからバイトでもしようかって思ったのによ……!」

 金髪JKは不満そうに唇を尖らせる。

「おっ、お姉ちゃん、かわいいね~」

 見るからにナンパな男が声をかけてくる。

「……あ?」

 金髪JKはナンパ男を睨む。

「俺らとお茶でもしない~?」

「お、おい、ちょっと待てよ……!」

 ナンパ男の連れが慌てて止める。ナンパ男が振り返る。

「なんだよ?」

「こ、この子はヤバい……!」

「ヤバい?」

「ああ、龍波竜美たつなみたつみだ……!」

「! あ、あの『暴竜』……!?」

「そ、そうだよ……」

「……失せろ」

「は、はい~」

「失礼しました~」

 竜美と呼ばれたJKはさらに一睨みする。その迫力に圧され、ナンパ男たちはそそくさと退散する。

「ちっ、くだらねえ……」

 竜美は背もたれによりかかり、透き通るような青い瞳で空を見上げる。

「……部活でもやるか?」

 竜美は視線を元に戻して、苦笑交じりに首を振る。

「この時期に入ってこられても扱いに困るだろうな……先輩とかと上手くやっていく自信がねえし……なによりそういう柄じゃねえか、アタシは……」

 竜美がため息をつく。

「はあ……ん?」

 竜美が公園の入り口の方を見ると、やや大きめのトラックが入ってきて駐車する。トラックは荷台の部分を左右とも開閉すると、その両側に本棚が現れる。

「あれは……移動図書館ってやつか……うん!?」

 竜美が己の目を疑う。運転席から服を着た熊が降りてきたからだ。

「く、熊!?」

 竜美が軽くパニック状態になる。しかし、移動図書館に集まってきた人たち、いわゆる利用者であろうか、その人たちはそれを気に留める様子がない。竜美がやや冷静さを取り戻す。

「そ、そういう着ぐるみなのか? しかし……」

 竜美が首を傾げる。利用者たちの中には、人間の大人や子どもだけでなく、服を着た猫や、服を着たうさぎなどもいたのである。

「な、なんだ、あのメルヘンチックな空間は……ん?」

 竜美がある人物に注目する。見覚えのある眼鏡をかけた三つ編みおさげの女の子が制服にエプロンをかけて、図書館の作業を手伝っていたからだ。何故に見覚えがあるかというと、竜美のクラスメイトだからだ。クラスでは浮いており、クラスメイトたちと交流がない竜美だが、不思議と彼女のことは覚えていた。

「……」

 竜美はベンチから立ち上がって、移動図書館に近づく。三つ編みの女の子が気が付く。

「! 龍波さん……?」

「よ、よう、アタシと同じクラスだよな……えっと……」

猫田真由美ねこたまゆみよ」

「ああ、そうだ、猫田だ。こんな所でなにやっているんだ?」

「……龍波さん……見えるの?」

 真由美がやや驚いた様子で問い返してくる。

「え? ああ、移動図書館ってやつだよな、久々に見かけたぜ。この公園にも来るんだな。それと熊の着ぐるみを着るとか……そういうファンサービス?みたいなものもしないといけないってのは大変だな」

「……」

「? どうかしたか?」

「……龍波さん、この図書館の仕事、手伝ってみない?」

「はあっ!?」

 真由美の言葉に竜美が驚く。

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