第22話
翌日早朝。
いつもより朝早くに起きて着替えて朝食を用意してもらう。
そして俺とE11小隊はいつ迎えがきてもいいように待機していると、インターホンが鳴り、アイーシャが対応してミランダ大佐が来たことを知らせてくれる。
そのまま俺たちはアイーシャに留守番を任せて家を出る。それぞれ全員武装した状態でだ。
「おはようございます、アルス様」
「おはよう、ミランダ大佐」
「全員乗れる
そのまま俺たちはミランダ大佐の案内のまま、
「アルス様、専用の隊服を用意しております。私服で軍事行動は危険ですのでこちらの更衣室でお着換えください」
「分かった」
どうやら俺の服装に問題があったらしい。まあ確かに私服でモンストルムと戦う人間なんていないだろうしな。
今日初めて軍服を着てみたが、意外と通気性がいい。それでいて生地が丈夫だ。
そのまま私服と杖を持って更衣室を出る。
「着替え終わったよ」
「では作戦開始地に行きましょう」
ということで今度こそ作戦開始地に行くことになった。
そして作戦開始地、エイト・クエレーレ・カスタルムの防御壁の一部が扉になっている。ここを通るのは2度目か。最初は遭難民として、そして今度は軍人として、か。今の俺の狙撃がどこまでモンストルムに通用するのか楽しみだな。
そのまま防御壁の扉を開けるのかと思いきや、一度
「本日7時よりモンストルムの集団の殲滅作戦を取り行う! なお、今回はモンストルムの数が非常に多いことから怪我人が多く出ることが予想される。死者も出る可能性もある。そこで上層部と掛け合い、欠損部位の治療をできる回復魔法使いでもあり、並の軍人と同程度に戦えるアルス様に従軍してもらうことになった。怪我人がでるのは仕方がない。だが死人は出さずに我々は帰還する。いいな!」
「「「はい!」」」
各小隊も気合いが入っているな。それと視線がすごい。ミランダ大佐より俺に視線が向いている気がする。正面に立ち並ぶ小隊を眺めていると、シャリエッタを見つけた。あいつも作戦に参加するのか。他の面々はおそらくBランク小隊などだろう。最低参加条件がCランク小隊から、といった感じか。だが小隊カタログを見た時に載っていたCランク小隊はほとんどいない。ということはシャリエッタの小隊は実力で参加しているのか。
「それでは移動を開始する! 全員
こうして俺の初陣が始まった。帝国兵としては何もできなかったが、軍としては何かできることがあればいいんだけど。できれば治療以外にも、というか戦闘にも参加させてほしいものだが。
そして俺の乗っている
さっきからバキッて音がしたりしてるから枝は折りながら進んでいるのだろう。
それから今日はツィエラたちの口数がやたらと少ない。なんでだ?
「ツィエラたち、なんか今日口数少なくない?」
「そんなことないわよ、いつも通りだわ」
「いや、いつもならもうちょっと和気藹々としてるような気がするんだけど」
「流石に任務でそんな雰囲気にはなれませんねえ……それも本来Cランク小隊以上が参加できる殲滅任務ですから、私たちは緊張しっぱなしですよ」
「そういうものなのか」
まあたしかにこの作戦に参加するEランク小隊は俺たちE11小隊だけだ。だがそれは俺の護衛小隊だからであって別に嫌がらせでもないし要請があってのことだから誰も文句は言わないのだからもっと楽にしてたらいいのに。
というか俺の席だけ明らかに他の席と違って改造されている。軍人用の
それからおよそ2時間くらい乗っていただろうか。ようやく車が停まり、全員降車指示が出る。
「全員、この場で陣を作る! 各小隊でテントを張り、周囲の警戒に当たれ!」
ミランダ大佐の指示が飛び、各小隊がテントを張り始める。が、俺たちはそんなもの持ってきていないぞ?
と思っていたら、
「アルス様、そしてE11小隊の荷物はこちらで用意しております。車の中に積んでありますのでそちらをお使いください」
「分かりました」
そう言ってツィエラとフィオーネが荷物を取りに行く。ベロニカとグリューエルは俺から離れない。多分既に護衛任務としての役割を決めてそれに従っているんだろうな。
そしてすぐにツィエラたちが全員分の荷物を持って戻ってくる。
テントはかなり大きめのものだ。これはおそらく小隊全員が眠れるサイズになっているのだろう。ということは俺はみんなと一緒に寝ることになるのか。
「アルス様、こちらがアルス様の分の食料が入った荷物になります」
「ありがとう」
フィオーネから荷物を受取ると結構重い。何が入ってるんだ?
そんなことを考えていると、ツィエラたちはテントを張り始める。それを手伝おうとしたが、護衛対象に働かせるわけにはいかないと言われて俺は何もできなかった。そしてテントが張られていくのを眺めていると、やはりというか、かなり大きめのテントが出来上がった。他の小隊よりも大きい。
「フィオーネ、なんか俺たちのテント大きくない?」
「それはおそらくアルス様に配慮してのことだと思います」
「俺に?」
「本来の男性であれば女性を怖がるものですので、同じテントで寝てもらうのは苦汁の決断でしょうが、最低限の距離は確保できるようにと大きめのテントを渡されているのでしょう」
「そっか、ならミランダ大佐の好意として受け取っておこう」
こうしてテントが完成したので中に入る。中は広くて陽の光が透けて入ってきていて仄かに明るい。そしてテントの中心にランタンをつけて光源を確保した。これでテント内でも快適に過ごせる。
ちなみに俺たちのテントの位置は陣の中央にある。やはり貴重な男性を従軍させるにあたってそのあたりは配慮されているのだろう。
それより俺は荷物の中身がなんなのか知りたい。のでテントの中で荷物の中身を確認していく。すると大量の水と食料だった。あとは寝袋が入っている。なるほど、これでこんなに重くなっていたのか。
それと家を出る前にアイ―シャから万が一にと持たされた精子提供の義務を果たすための小瓶を合わせて結構な荷物だ。
それらも元に戻してテントを出る。そして周囲を見渡すと、周囲もテントだらけで円を描くようにテントが張られている。そして各小隊の面々が既に警戒態勢に入っていた。
「ねえツィエラ、俺たちってどこを警戒していたらいいんだ?」
「私たちは警戒はしなくて大丈夫よ、むしろ女性がアルス様に手を出さないか警戒しないと」
「軍事行動中にそんなことがあるのか?」
「過去に男性を従軍させた例がないからなんともいえないけど、警戒しないよりはマシよ」
「もしかして俺たちって戦闘が始まるまで相当暇なのでは?」
俺は気付いてしまった。陣の中央に配置されたテント、そして周囲の警戒をする必要のない環境。これは軍事行動というよりお偉いさんの行動だろうと。別に俺も偉いわけじゃないんだけどな……。
「そういえば俺も今回は二等兵扱いかな」
「いやいや、そんなわけないじゃないですかアルス様。陣の中央にテントを張っている時点で大佐と変わらないですよ」
「ただのなんちゃって軍属の俺が大佐並の扱いを受けてるのか……」
「そもそも男性を戦場に出すこと自体がおかしいんですからこれは当然の措置です」
「フィオーネまでそう言うってことは本当に二等兵扱いはされないんだな」
なんてやり取りをしながら俺は周囲を警戒しているらしい小隊たちを見て回ることにした。他にやることなんてないし、万が一戦闘になっても俺は戦えるから問題ないだろう。
そう思って小隊を見ていると、前衛が3人後衛が2人のところもあれば、前衛1人、中衛2人、後衛2人など陣形が色々とあることが分かる。結構参考になるな、なんて考えていると、
「あら、ツィエラではありませんの、こんなところで何をしているんですの?」
どうやらシャリエッタの近くに来ていたらしい。案の定声を掛けられた。
「アルス様の散歩の護衛よ」
「陣の中で護衛なんて必要ないでしょうに……いえ、なるほど、確かに男性が従軍した例はありませんものね。何があるか分からない以上念には念を入れておくべきですわ。……ところで、貴方達の武器のエーテル鉱石、随分と質の良いものに変わりましたのね?」
「ええ、アルス様が護衛をするならと言って質の良いエーテル鉱石を人数分用意してくださったの。おかげで装備の質が段違いに良くなったわ」
「あら、羨ましい限りですこと。私もアルス様と仲良くなればエーテル鉱石を分けていただけるのかしら」
「あれはそう簡単に用意できるものではないらしいから難しいと思うわよ」
なんて話をしている。シャリエッタがツィエラに話しかけていると移動しにくいんだよな……。なんか知り合い同士の会話を打ち切ってしまうのも可哀そうだし。
それからしばらくはシャリエッタの会話にツィエラを付き合わせるのだった。
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