国を豊かにしたい少女の奮闘記

時雨古鷹

第1話

 熱い…。

 ふとそう思い目を開けるとあたりは真っ赤に燃えていた。


「えっ、まさか火事⁉逃げなきゃ!!」


 私は必死に出口を探した。火の燃える音に混じって消防車のサイレンの音も聞こえる。私はそのサイレンが鳴る方向に向かって走ろうとした。しかし何かに躓いて転んでしまう。

 その直後、天井が崩れ落ち私は死んだ。


「橋下彩さん、橋下彩さん!!」


 私を呼ぶ声が聞こえる。私は死んだはずだ。いや、死んだというのは私の勝手な思い込みで現実は助かったのかもしれない。


「いえ、残念ながら彩さんは火事によりお亡くなりになりました」


 目を開けると美しい白髪を腰まで伸ばしている女性が立っていた。年齢は私と同じ18才くらいだろうか。


「うれしいですね。そのように思っていただけるとは。まぁあなたがなくなったことが信じられないようならニュースでしたか?その映像がありますのでどうぞ」


 女性はそう言うとどこから現れたのか分からないスクリーンが出てきた。スクリーンに映るのは間違いなく私が住んでいたアパートだ。私の部屋だけ燃えたようだ。


「その通りです。出火の原因はあなたを憎んでいたクラスメイトの一人です。あなた以外の入居者はけがもなく逃げ切れましたが、あなただけお亡くなりに」


 そう…

 まさにその一言に尽きた。


「あ、名乗らずにごめんなさい。私は橋下彩、高校三年生です。失礼ですがここは天国なのでしょうか」


 できる限り丁寧な言葉で話す。記憶によればこの女性の人は私の思考を読み取っていたからだ。あたりを見渡しても自然豊かで天国にしか見えない。


「存じております。私は天空の女神リュカ。一応天空の女神ってことですが実際にはすべての世界を管理する最高神にあたる神です」


「まさか最高神様でしたとはつゆ知らず飛んだ口の利き方をしてしまい失礼申し仕ります。ところで私はこれからどうなるのでしょうか。このまま漂い続けるのでしょうか」


 私がそういうと女神さまは優しく微笑んでまた新たなスクリーンをだした。そこにはいかにも異世界というような世界が映し出されていた。


「彩さんはこの世界に転生してもらいます。何か目的があるわけでもないですがとっておきの能力を与えてあげましょう。時間がないので詳しい説明は省きますが彩さんはこの世界の成人である12才の姿で転生してもらいます。貨幣についての単位はマルクと呼ばれそれとは別に銅貨や銀貨、金貨もあります。いくらか送らせてもらいますね。もう時間がないようです。それではよい人生を」


 ちょっとは私の話をきけー!!

 その思いむなしく私の視界は白く染まっていったのだった。

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