『量子魔導士 - クロノダイバー-』 ~究極理論が導く運命の分岐点~
ソコニ
第1話『異世界の物理学者』
真夜中の東京大学量子物理学研究棟。実験室で一人、量子もつれの研究に没頭する霧島航助教授(28)。周囲の研究者たちはとうに帰宅している。モニターには複雑な量子状態のデータが次々と表示され、霧島はそれを真剣な表情で見つめていた。
「やはり、この数値の変動...多世界解釈が正しければ...」
霧島が呟いた瞬間、実験装置が異常な反応を示し始める。警告音が鳴り響き、制御不能なほどのエネルギー値を示すモニター。慌てて装置の電源を切ろうとする霧島だが、その前に装置から眩い光が放射される。
「くっ...これは...!」
意識が遠のく中、霧島の視界は白く染まっていった。
目を覚ますと、そこは見知らぬ石造りの部屋。窓から差し込む光に目を凝らすと、空には二つの月が輝いていた。街並みは中世ヨーロッパを思わせる異国の景色。
「ここは...どこだ?」
パニックになりかけた時、霧島の視界に不思議な数値が浮かび上がる。まるでAR表示のように、周囲の物体や現象に確率値が付随して見える。自身の生存確率はわずか30%。そして、その数値は刻一刻と変動していた。
「これは、量子確率の可視化...?まさか、研究していた多世界が...」
考え込む霧島の元に、突如として銀髪の少女が現れる。リリア・サファイアムーン、王立魔法学園の主席講師だという。
「あなたから異常な魔力波形が検出されたの。普通の転移者とは明らかに違う」
リリアの説明によると、ここは魔法が日常的に使われる異世界。しかし霧島の放つエネルギーは、通常の魔法使いとは全く異なる性質を持っているという。
研究者の本能から、霧島は持っていたノートにデータの記録を始める。その瞬間、世界が一瞬静止したかのような感覚に襲われる。視界には無数の光の糸が浮かび上がった。それは世界の可能性、世界線だと直感的に理解する。
そして、自分にはそれらを観測し、時には操作する力が備わっていることも。
リリアの案内で王立魔法学園へ向かう道中、黒装束の刺客が襲いかかってくる。リリアの魔法で何とか逃げ切るものの、霧島は自分を狙う者の存在を知る。生存確率は20%まで低下。
「霧島さん、あなたの力は誰かに狙われているみたい。でも大丈夫、私が守るから」
リリアの言葉に少し安心しながらも、霧島は自分の身に起こった異変の謎を解き明かす決意を固める。そして、この世界での新たな研究の第一歩を踏み出すのだった。
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