ドアを叩く者

ツヨシ

第1話

暑い夏の夜。

窓を全開にして、部屋でくつろいでいた。

すると音がした。

一階の部屋のドアを、誰かが叩いているようだ。

結構強めに。

俺の住んでいるアパートは二階建てで、各階四部屋ある。

今ドアが叩かれているのは一階西端の部屋で、俺の部屋は二階の東端だ。

しばらくするとドアの開く音がした。

しばしの静寂。

出てきた男はなにかぶつぶつつぶやいて、部屋に戻った。

――まるで誰もいなかったみたいな反応だな。確かに誰かがドアを叩いていたのだけど。

すると次に隣の部屋のドアが叩かれた。

今度は住人がすぐに出てきたが、これまた少ししてから何かをつぶやいて部屋に戻った。

そしてその隣の部屋も、さらにその隣の部屋も同じようにドアが叩かれ、住人が出て来て、その後何事もなかったかのように部屋に戻った。

――なんだ、いったい。誰がドアを叩いているんだ。

すると今度は二階の西端のドアが叩かれた。

――えっ?

外階段は西端にあるのだが、鉄製で誰が歩いてもけっこう大きな音がする。

しかし階段を上る音は全く聞こえなかった。

それなのに先ほど一階四部屋のドアを叩いた者は、今二階にいるようなのだ。

――どうやって音をたてずに二階へ?

考えたがわからない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る