桜色の甘い囁き〜私と貴女の恋色〜
一ノ瀬 彩音
第1話
「はぁ」
思わずため息が漏れる。
窓の外を見ると、どんよりとした曇り空が広がっている。
まるで私の心を映し出しているかのようだ。
私は今、憂鬱な気分でいっぱいだった。
それもこれも全部あいつのせいだ。
私の名前は、相川桜。
どこにでもいるような普通の女子高生だ。
そんな私には、最近悩みがある。
それは、隣の席の女子、御園凪沙のことだ。
彼女は、いつも一人でいることが多く、あまり人と関わらないタイプなのだ。
そんな彼女に興味を持った私は、何度か話しかけようとしたのだが、
結局一度も話しかけることができずにいた。
そんなある日のこと、いつものように授業を受けていると、突然先生が言った。
「今日は、席替えをします!」
その瞬間、クラス中がざわつき始めた。
みんな新しい席に期待を寄せているようだ。
かくいう私もどんな人が隣になるのか気になっていた。
そしてついにその時が来た。
くじ引きの結果、私の隣の席になったのは、なんとあの御園さんだったのだ!
これはチャンスだと思い、早速話しかけてみることにした。
「よろしくね!」
そうすると彼女は、小さな声で返事をした。
それからというもの、少しずつではあるが会話が続くようになり、私たちは次第に仲良くなっていった。
そんな矢先のことだった。
ある出来事が起きたのだ。
その日、いつも通り学校に行くと教室に入ると何やら様子がおかしいことに気づいた。
クラスメイトたちがひそひそ話をしているようだ。
一体どうしたんだろうと思っていると、一人の生徒が話しかけてきた。
話を聞くところによると、どうやら昨日、御園さんが何者かに襲われそうになったらしいというのだ。
幸いにも未遂に終わったようだが、もし本当に襲われていたらと思うとゾッとする話だ。
しかも犯人はまだ捕まっていないらしく、不安が残る状況だという。
そこで、私たちも協力して犯人探しに協力することになった。
放課後になると、私と御園さんは二人で行動することにした。
まずは目撃情報を集めるため、聞き込み調査を開始した。
最初は順調だったが、時間が経つにつれて手がかりは少なくなり、進展はなかった。
それでも諦めずに続けているうちに、ついに有力な情報を手に入れた。
その情報によると、犯人は同じ学校の男子生徒で、
動機としては嫉妬によるものだということらしい。
それを聞いた瞬間、背筋が凍るような思いになった。
なぜなら、その人物とは同じクラスの生徒だったからだからだ。
このままではいけないと思い、すぐに本人に直接問いただすことにした。
そうすると彼はあっさりと自白したのだった。
理由は単純明快、御園さんに好意を抱いていたからである。
だが、その気持ちを伝えることもできずにいる内に、
どんどん距離ができてしまったため、ついカッとなってやってしまったということだった。
その後、警察へ通報し事件は解決したが、今回の件をきっかけに私たちの絆はさらに深まったような気がした。
「ねえ、今度一緒に遊ばない?」
私は思い切って誘ってみた。
そうすると彼女は嬉しそうな顔で答えた。
「うん、いいよ!」
こうして、私たちは休日に遊ぶ約束をしたのだ。
当日、待ち合わせ場所に着くと既に彼女が待っていた。
彼女の私服姿を見るのは初めてだったので新鮮味を感じた。
とても可愛らしい服装をしており、思わず見惚れてしまうほどだった。
そうして歩いているうちに目的地に到着した。
そこは遊園地だった。
ジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に入ったりと色々なアトラクションを楽しんでいた。
中でも一番印象に残ったのは観覧車である。
頂上に近づくにつれて緊張が高まり、心臓の音が高鳴るのを感じた。
やがて頂点に達した時、私は彼女に告白しようと決意を固めた。
しかし、いざとなると言葉が出てこない。
そうすると彼女の方から声をかけてきた。
「どうしたの? 何かあった?」
心配そうな顔で見つめてくる。
その表情を見ているうちにますます緊張してきてしまい、
「えっと……その……」
と言い淀んでしまう始末だ。
すると今度は逆に彼女から声をかけられた。
「……好き」
一瞬何を言われたのか理解できなかったが、しばらくして意味を理解した途端、顔が熱くなるのを感じた。
まさか向こうから言われるとは思っていなかったので動揺してしまう。
(どうしよう……!)
頭の中はもうパニック状態だ。
そんな中、何とか言葉を振り絞って返事をすることができた。
「わ、私も好きだよ……!」
そう言うと同時に唇を重ね合わせた。
初めてのキスの味はとても甘く感じられた。
その後もデートを続け、最後に夜景を見ながら二人きりの時間を過ごした後、帰宅したのだった。
翌日、学校で顔を合わせるとお互い照れくさくてまともに目を合わせることができなかった。
だけど、それがまた幸せでもあった。
「おはよう!」
挨拶を交わす度に胸がドキドキするのがわかるほどだ。
その様子を見ていた友達からは冷やかされてしまったけれど、それも気にならないくらい浮かれ気分だった。
「あのさ、今度の休み空いてるかな?」
勇気を出して聞いてみることにした。
そうすると彼女は笑顔で答えてくれた。
「もちろんだよ! 楽しみにしてるね!」
と答えた彼女の顔はとても嬉しそうだった。
その日は一日中幸せな気分で過ごした。
早く週末にならないかと待ち遠しく思いながら日々を過ごしていた。
そしていよいよその日がやってきた。
待ち合わせの場所へ向かう途中、何度も深呼吸して気持ちを落ち着かせるように心がけた。
しばらくすると彼女がやってきた。
今日の彼女は一段と可愛く見えた。
まるで天使のような美しさだと思ったくらいだ。
そんなことを考えているうちに自然と言葉が出てきた。
「好き」
その言葉を聞くと彼女は嬉しそうに微笑んでくれた。
そして私の手を取り歩き始めた。
その手は小さく柔らかくて温かかった。
そのまましばらく歩いた後、休憩するためにベンチに座ることにした。
並んで座るとお互いの肩が触れ合いそうなほど距離が近くなる。
心臓がバクバク鳴っているのが聞こえるのではないかと思うくらいだ。
そんな状態のまま沈黙の時間が流れる中、先に口を開いたのは私の方だった。
「あのね、キスしたいな」
「えっ!?」
驚くのも無理はないだろう。
いきなりこんなことを言われたら誰だって戸惑うはずだ。
私だって逆の立場だったら同じように思うに違いない。
だが、ここで引き下がるわけにはいかないのだ。
意を決して再び問いかける。
そうすると彼女は顔を赤らめながらも小さく頷いてくれた。
それを確認した後、ゆっくりと顔を近づけていく。
お互いの息遣いを感じるほどの距離まで近づくと目を閉じた。
そして、唇に触れるだけの軽いキスをした。
柔らかい感触が伝わってくると同時に幸福感に包まれた気がした。
数秒間、そうした後で顔を離した。
目を開けると目の前に彼女の顔があった。
目が合った瞬間、恥ずかしくなって目を逸らそうとしたのだができなかった。
何故なら彼女もこちらを見つめていたからだ。
その瞳の奥には明らかに情欲の色が浮かんでいた。
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