フレデリックリンカーン
エリー.ファー
フレデリックリンカーン
さあ。殺そう。
すべて、殺してしまおう。
何せ、この国の人間は怠惰で生意気だ。
何もかも失わなければ、自分が悲劇の中にいることにも気づかない。
死による救済を与えなければならない。
国の中に埋まった骨たちが蠢きだす。
明日が来る前に死体がやって来て、私たちの運命を齧り出すだろう。
神に祈る前に、明日の自分に期待する前に、神になれるような努力と、今日の自分の苦労の上に立つべきだ。
私の名前は、フレデリックリンカーン。
何かが起きる前にやって来て、何もかも起こして去っていく怪物。
フレデリックリンカーンという名前を持っているが、本名なのかは分からない。
私にとっての名前というのは、何の意味もないからだ。
得票数で語るために、私が存在している。
君も、あなたも、お前も、そこの女も。
全員、私のために生きている。
頼むから死を感じさせてくれ。
私は不死身なのだ。
刺激がない。
このまま生きていくのが恐くてしょうがないのだ。
私のことを忘れてみてくれ。
何度も、何度も、何度も、お願いをしてきたんだ。
でも、誰も私を忘れてくれないのだ。
どうしてだ。
なぁ、どうしてなのだ。
教えて欲しい。
私が忘れ去られたいのだ。
誰の視界にも映らない人生を、ここに築き上げようとしている。
しかし。
あぁっ。
世界は、私を求めている。
世界が、多くの他人を肉の塊にして私を生み出そうとしている。
私のための世界を、世界が用意してくれる。
分かっている。
分かっているさ。
これは、余りにも贅沢。
多くの人に嫉妬されることうけあい。
私の人生が紙くずのようになっていくのを誰もが求めている。
そう。
きっと。
この私も求めている。
だからこそ、記憶に残るように生きていく必要がある。
矛盾していると思うか。
分からないだろう。
君のような人間には分からないだろう。
この矛盾が、私を作り出し、この矛盾が、私という存在を立たせている。
誰かの考えの中にいる私ではなく、神になるために王を目指し、世界を破壊しようとする発想。
私は、かつてフレデリックリンカーンだった者。
そして。
フレデリックリンカーンに生まれ変わる者。
誰か、私のために蝋燭を持ってきてくれ。
そうだ。
私に放火してくれ。
炎上をしたいんだ。
そして。
気が付けば、ヒーローになっている。
救世主になっている。
世界が私のために動き、私を笑顔にするために走り回ってくれる。
明日も、私だ。
しかし。
明後日はどうだろう。
いつか私たちは、私たち以外の真理から、世界が作り出されていることを知るだろう。
考えすぎて、自分という存在も曖昧になっていく過程を楽しめるようになるだろう。
その内、私は世界を綺麗に破壊し終えて。
今から、私の数える言葉が意味を見出す前に意味を作り出すお約束。
分かって欲しい。
私は孤独なのだ。
こうして、言葉を紡いでいるのもきっと、何かの間違いでしかないのだ。
もっと、別の行動をするべきであって、私の価値など零に等しいはずだ。
私は、私を冷静に演じている。
でも。
私は、たまに、私に食べられてしまう。
それが心地よい。
それが成長である。
そして。
またも、世界は私のものになる。
構わないから、続けなさい。
フレデリックリンカーン エリー.ファー @eri-far-
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