第12話
部屋へ上げて、ここに居てもいいと言ってしまった以上、アリソンが美風の命を狙うといった事が無い限りは、当分この悪魔と住む覚悟は出来た。
他所で大量殺人などあったら、それこそ後悔してしまう。それに何だかんだで魔界へ帰りたくなる時が来るだろう。それまでに魔力がどうにか回復してくれる事を願うしかなかった。
眩しい朝の陽光が窓から降り注ぐ。美風は上半身をゆっくりと起こして、重い頭を支えるように手を額に置いた。
一睡も出来なかった。いや、出来るはずもない。だって悪魔がいるのだから。自分のテリトリー内に他人がいるだけでこうも神経が高ぶるとは思っていなかった。
(そりゃそうだ。何度も言うけどさ、悪魔がこの部屋にいるんだよ! 心から安心して寝られないだろ)
「もうそっちへ降りていいか?」
「……え?」
びっくりしながら声がした方へと顔を上げると、ロフトからアリソンが顔を覗かせていた。
律儀に美風の許可を取っている。一応美風が出した条件というものを理解してくれているようだ。
「あ、あぁ……どうぞ」
美風がそう声を掛けると、アリソンは梯子を使わず、ふわりと飛び降りる。長身の男が着地に音も出さず、しかも少し浮いている
そしてアリソンの恰好に美風は気まずさで目を逸らした。昨夜、アリソンに寝るためのパジャマ代わりとなる物を探したが、やっぱりアリソンの大きな体格では美風の服などどれも入らない。仕方なくジャケットだけ脱いでもらい、下だけは何とかスウェットパンツを穿いてもらった。しかし裾が膝下にまで上がってしまい、何とも不格好なものになってしまい……。
それでもモデルのように見えてしまうのは、美しい容姿のためだ。胸板の厚さや腕の太さなど男らしいの一言に尽きた。
「お、おはよう」
「あぁ、おはよう」
ちゃんと挨拶も返す悪魔。
「アリソンって、さっきの飛び降りた時もそうだけど、今の魔力で空とか飛べたりする? そもそもどれくらいの魔力が使えるんだ?」
「俺に少しは興味持ってくれたのか?」
アリソンがとても嬉しそうに目尻を下げる。その誤解は嬉しくないけど、アリソンの表情が結構豊かなおかげでコミニュケーションが取りやすい。
「アリソンにというか、魔力に興味があるんだよ」
「まぁ、それも俺の一部だからな」
ポジティブシンキング。
「今の俺の魔力では、空を飛ぶと言うより浮く事が出来るな。後は物を動かしたり……」
「わっ!?」
ローテーブルからテレビのリモコン、ペットボトル、ティッシュ箱などが浮いたことよりも、アリソンの手に驚愕せずにはいられなかった。
「も、燃えてる」
アリソンの手を包むように青い炎がメラメラと燃えているのだ。
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