第3話 英雄の訪問

「えっ?なんで?」

俺は困惑する、過去に合った事でリリィは俺を恨んでいるはずなのである。

「カズキさん、会いたかったです。」

俺の困惑とは別にリリィは嬉しそうに俺をギュッと抱きしめる。


「リリィさん、ここでは皆さんが見ております、カズキを連れて奥の部屋に向かいましょう。」

「あっ・・・

ラックさん無理を言ってしまってすみません。」

「いえいえ、ギルドへの貢献を考えればカズキの一人や二人いくらでも。」

「カズキさんは一人しかいません!」

リリィのほっぺたが膨れ上がる。

「あっ、いやまさにその通りなのですが、言葉の綾と言うやつです。」

「ラックどういう事か説明してくれるな?」

「も、もちろんだとも、さあ中に。」

俺はラックに案内されリリィとともにギルド奥の応接室に案内される、その間もリリィは俺と腕を取り逃がさないようにしている。


「それでラックどういう事だ?」

「どうもこうも、リリィさんからの頼みでお前をリリィさんの案内役にした、それだけだ。」

「それだけだって、なんで俺に・・・」


「やっと会えました、ずっとギガンに来たかったのに王都のギルドの休みは少なくて来れなかったんです。」

「魔王軍の侵攻で魔物の動きが活発だったからだよね、交通の便が良く情報も集まる王都に優秀な冒険者を集め各地への対応をする為だったとか。」

「そうなんですけど、休暇もあって良いと思いませんか。」

「まあわからなくも無いけど。」

「でも、やっと魔王軍を大きく撤退させることが出来たのでお休みが取れたんです。」

リリィは嬉しそうに語る。


「でも折角の休みになんでギガンに?」

「えっ?」

「ギガンは特に観光するような所も無いし、王都の方が色々合って楽しい所だって聞くけど?」

「もうカズキさんに会いに来たんです。」

「俺に?」

「そうです、なんでわかってくれないんですか?」

少しプンと怒った表情を見せる。


「・・・」

やはり目的は俺なのか、リリィにとって無くすべき過去を片付ける為なのだろう。

英雄と呼ばれ輝ける未来が待っているリリィにとって汚点とも言える俺との関係が世間に伝わるのはよろしくは無いのだろう。


「リリィさん、やはりあの事で?」

「もうカズキさん、いきなり恥ずかしい事を聞かないでください!」

俺の質問にリリィは頬を赤らめる。

「俺は何も話してはいないし公表するつもりも無い、それでもダメか?」

「ダメも何も私にとって大事なことですし・・・」

無意識なのだろうかリリィは恥ずかしそうな表情を見せながら軽く下腹を撫でる。


それは動きは未だにシッカリと覚えているとの事に違いない、それもそのはず少女にとって忘れられない事なのは想像に堅くない。


「あの時はすまないと思っている、だが命だけは見逃してもらえないだろうか?」

俺の命乞いにリリィの目はきょとんとしているであった。

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