英雄の初めてを知るのは俺

カティ

一人目剣士リリィ

第1話 ロートル冒険者カズキ

地方都市ザガン

そこで冒険者を二十年やっているロートル、それが俺カズキだ。


「カズキ、そろそろ引退しろよ、もう体もきついだろ?」

俺を心配して声をかけてくれるのはギルドマスターでもあるラックだ、彼は昔同じパーティだった事もあり俺を気にかけてくれている。

「まだ若い者には負けないさ、それにまだ見つけていない物もあるからな。」

「見つからない物って、まだ諦めていないのか?あれはおとぎ話に似た物だって気づいているだろ。」

「諦められない物はあるのさ、それより食堂は開いてるか?」

「まったく、開いてるがギルドに飯食いに来るのはお前ぐらいだぞ。」

「ここの飯は美味いからな、なんで誰も食べないか不思議でならない。」

「一般人は荒くれの冒険者と飯を食べようとはしないし、冒険者ならもっと早い時間から依頼を受けて仕事に行ってるさ。」

「まあ、そうだよな。」

俺はラックに手を振り食事を取るためにキルド内の食堂に向かう。


「カズキさん、今日も来てくれたんですか?」

「ここの食事は美味しいからね、マリちゃんいつものを頼むよ。」

「ご飯と味噌汁、焼き魚ですね。」

「そうだよ、お願いね。」

ここではザガンでも珍しい東方の国の料理が出てくるのだ、俺はこの料理を好んで食べている。


俺は宿で朝食を取りながら新聞を見る。

そこには魔王軍四天王土のマツラギを倒し凱旋した英雄リリィの活躍とその可愛らしい姿が写真とともに載せられていた。

「あの子がねぇ・・・」

俺は写真に写るリリィに会ったことがある、彼女からすれば汚点でもあるだろうが、多少なりの関係があった者とすれば彼女の活躍は嬉しい物があった。


「おい、カズキの兄貴聞いたか!」

「なんだよ?騒がしいな。

食堂では静かにしろよ。」

急に食堂に駆け込んできたのはギガン出身の若手冒険者ルーカスだった。

「一大事なんだって!」

「まったく・・・それでなんだよ?」

「リリィがザガンにやって来るって話なんだ!」

「はぁ?リリィってこの子か?」

俺は新聞の写真を見せる。


「そうだよ!この子だよ!」

「なんで今更この町に?王都所属になって活躍してる最中だろ?」

「そうなんだけど、なんか休暇がてらこっちの方に来るって!」

「休暇でこの町に?特に何も無いだろ?」

「知らないって!ラックさんも目を丸くしてたから本当の事だと思う。」

「さっき会った時には普通だったからその後連絡来たのか?」

「それは知らないけど!Sランク冒険者に会えるなんて俺初めてだからどうしたら良いんだか!」

「お前が何をする必要があるんだよ、そんな相手はラックに任せればいいんだ。」

「いやまあそうなんだけど、ほら稽古の相手とか、ダンジョンの案内とか頼まれるかも知れないじゃないか!」

「それこそ普通にやれよ、今みたいに浮かれ上がっていると足下をすくわれるぞ。」

「そ、そうなんだけど・・・」

ルーカスが騒ぐのも無理は無いか、Sランク冒険者というと世界に10人しかいない選ばれた存在である、それを見る機会など地方都市に居れば中々あることでは無い。


「おい!カズキ!カズキ!」

今度はラックが慌てた様子で食堂に駆け込んでくる。

「ラック静かにしろよ、ギルドマスターが騒がしくするなよ。」

「そんな事はどうでもいい!カズキに仕事を依頼する!」

「はぁ・・・話だけ聞くよ。」

「Sランク冒険者リリィの応対を頼む!」

「えっ!!なんでカズキさんが!!」

ルーカスは俺とラックを交互に見る。

「ルーカス知らないのか?リリィさんは昔ギガンに居てその時カズキと縁が合ったんだぞ。」

「えーーー!!」

食堂内にルーカスの叫びが響くのであった・・・

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