- デバッグ帝国記 ~転生した軍参謀、荒地を統べる~
桓譲
第1話 転生、荒廃の地にて
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和田誠一郎の最期
和田誠一郎は、大洋帝国海軍の参謀として数多くの戦略を立案し、数え切れない激戦を潜り抜けてきた。しかし、戦局が悪化し、敵国に制海権を握られると、戦いの舞台は島嶼部や沿岸の防衛線へと移り変わった。
「海軍と陸軍が連携して敵を迎え撃つ? 皮肉なものだな。」
彼は若い頃、陸軍に出向して施設建設や土木技術を学んだ経験があり、その知識が買われて、この作戦では陸海合同部隊に派遣されていた。防衛ラインを構築するために、彼は陸軍側の参謀として敵の上陸を阻む要塞や地下施設の建設計画に携わっていたのだ。
だが、敵の圧倒的な兵力と物量を前に防衛線は崩壊。最前線で指揮を執っていた彼らは、退路を断たれ、地下壕に追い詰められることとなった。
「参謀閣下、敵の包囲網がさらに狭まっています!」
報告を受けた和田は、冷静に状況を分析した。この地下壕は元々、彼が設計に関わった防衛拠点の一部だ。地形を利用して防御を固めていたが、時間の問題だった。
「もう持たないな……」
壕内の兵士たちは、疲労と負傷で満足に動ける者が少なかった。敵は迫っている。それでも彼は自分の使命を果たそうと最後まで指揮を執り続けた。
「お前たちは脱出しろ。俺が囮になる。」
「しかし、参謀閣下!」
「命令だ! 俺に従え!」
彼は地下壕の構造を利用し、罠を仕掛けて敵を足止めする作戦を立案。その間に少数の兵士を逃がす計画を実行した。そして最後、彼自身が囮となって敵の進軍を食い止めたのだ。
「これが俺の戦いの終わりか……」
重傷を負い、意識を失いかける中、彼は微かに笑みを浮かべた。
「平和な世界を……誰かが築いてくれるといいな……」
その願いと共に、和田誠一郎の意識は途絶えた。
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転生と赤子としての目覚め
気がつくと、彼は何か温かいものに包まれていた。目を開けるとぼんやりとした光景が広がり、自分が抱かれていることを感じた。
「……これは?」
身体を動かそうとするが、手足は短く、力が入らない。そして、彼の耳に聞き慣れない言語が飛び込んできた。
「デバ……デバッグ……」
どうやら、それがこの赤子に与えられた名前らしい。
「転生した……しかも赤ん坊に?」
和田誠一郎は、再び人生をやり直すことになったことを理解した。ここはアバリス大陸。かつて高度な文明が栄えたが、今では荒廃し、戦争や差別が続く過酷な土地だった。
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幼少期の記憶と努力
デバッグは成長するにつれて、自分が生まれた村が極度の貧困に苦しんでいることを知る。水は遠くの川から運ばなければならず、食料も乏しい。さらに、自分の属する人種は奴隷として扱われることが多く、常に差別の対象だった。
「こんな環境で、どう生き延びればいい?」
だが、彼は前世での知識と冷静な思考を活かし、生きる術を模索した。幼い身体でもできる範囲で、村の状況を観察し、地形や環境を覚え込んでいった。
6歳の頃には、他の子どもたちが遊ぶ中、一人で文字や計算を練習する姿が見られた。前世の記憶がある彼にとって、再び学び直すのは容易だったが、それを隠しつつ少しずつ信頼を得ていく努力を続けた。
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井戸掘りへの挑戦(8歳)
8歳になったデバッグは、村の最大の課題が「水」であることを確信した。遠くの川まで行く時間と労力を考えれば、村の近くに井戸を掘る必要がある。
「村人たちの信頼を得るには、成果を見せるしかない。」
彼は、村の外れにある低地を観察し、水脈が通っている可能性が高い場所を選んだ。持ち合わせた知識と簡素な道具を使い、黙々と掘削を始めた。
そんな彼の姿を見て、周囲の村人たちは嘲笑した。
「またデバッグが変なことをしてるぞ。」
「そんなことしても何も変わらないさ。」
それでも彼は諦めなかった。
「口で言うだけの連中に任せておいたら、未来なんて来ない。」
その日、彼の作業をじっと見つめる少女が現れた。
「何してるの?」
声をかけてきたのはカラナ。村で同じように差別される人種の少女だった。
「水を掘ってるんだ。」
「どうして?」
「水がなければ村は生き残れないからだ。」
その言葉にカラナは目を輝かせ、微笑んだ。
「手伝ってもいい?」
彼は驚きながらも頷いた。
「怪我をしないようにな。」
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小さな成果と希望
数日後、デバッグとカラナの努力が実り、小さな水たまりが地面から湧き出た。
「デバッグ、これ……本当にお前がやったのか?」
村人たちは驚きと共に、彼を見る目を変え始めた。
「これを井戸にするにはまだ時間がかかる。でも、手伝ってくれるなら、もっと良くなる。」
その言葉に、村人たちは少しずつ彼の計画に協力するようになった。
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決意
その夜、デバッグは星空を見上げながら思った。前世で果たせなかった「平和な未来」をこの地で作る。それが自分に与えられた使命だと。
「この荒地を変える。そのために俺がここにいる。」
冷静でユーモアを忘れない彼の瞳には、確固たる決意が宿っていた。
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(第1話 完)
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