第6話 招かれざる訪問者
その夜、優子はなかなか眠りにつくことができなかった。
送られてきた写真が何を意味するのか、考えれば考えるほど胸がざわつく。
明かりを消した部屋の中で、モモだけが静かに丸まって寝息を立てている。
時計が深夜1時を指した頃、廊下の方から足音が聞こえた。
――コツ、コツ、コツ。
誰かがこちらに向かってゆっくりと歩いてくる音だった。
「こんな時間に……?」
優子は心臓の鼓動を抑えながら、布団から身を起こした。
足音は確実に彼女の部屋の前で止まった。
ドアをノックする音が響く。
――コン、コン。
静寂の中、その音だけが不気味に鳴り響く。
「誰……?」
声を出したつもりだったが、喉が乾いてうまく声が出ない。
ノックはもう一度繰り返される。
優子は恐る恐る玄関まで歩き、ドアスコープを覗いた。
だが、そこには何も映っていなかった。
ドア越しに誰もいないことを確認しても、彼女の不安は消えない。
ふと足元に視線を落とすと、隙間の向こうから何かが動いているのが見えた。
――それは、真っ黒な影のようなものだった。
「なんなの……これ……」
背筋が凍るような感覚が襲い、優子はドアから距離を取った。
すると、突然モモが激しく吠え始めた。
「モモ、やめて!」
優子が叫ぶと、ドアの向こうで何かが激しく動く音がした。
同時に、部屋の電気が一瞬だけ消え、真っ暗になった。
次に電気がついたとき、部屋は奇妙な静寂に包まれていた。
モモはソファの後ろに隠れ、唸り声を上げ続けている。
「……誰かいるの?」
勇気を振り絞って声を出したが、返事はなかった。
そのとき、リビングの窓ガラスに何かが映った。
それは人影のようだったが、その輪郭は曖昧で揺らめいている。
優子は動けないまま、その影を見つめ続けた。
影はじっと彼女を見つめ返しているかのようだった。
突然、ガラス越しに何かがぶつかる音がした。
パリン――とガラスが割れる音が響き渡り、優子は悲鳴を上げて床に崩れ落ちた。
空気が冷たくなり、部屋の隅々に奇妙な圧迫感が広がる。
割れた窓から吹き込む風が、彼女の髪を揺らした。
「お願い……やめて……」
優子の耳元で誰かがささやくような声が聞こえた。
「――戻ってきて……」
その声は彼女が決して忘れることのない、小学校時代の誰かの声に似ていた。
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