第1話 その悪役令嬢は勇者になる。
『魔王討伐すると、賞金10000000リン!さあ勇気ある者よ!今こそ、立ち上がる時だ!』
魔王討伐の国からの依頼の貼り紙が貼ってある。
その貼り紙の回りに、たくさんの人が集まっており、
「あんなのだれがやるかよー、そんな命知らずいるわけねーだろ。」
といった声や、
「賞金めっちゃ高いじゃん!すごっ!」
といった声など、様々なことを言っている。
そんなところへ、
「ちょっと失礼。」
そう言って、割り込んで私はその貼り紙をはがした。
そして、
「この依頼、やりたいんだけど。」
と、ギルド職員に声をかけた。
「あっ、はーい。えっと、ギルドカードはお持ちですか?」
「はい。」
私はめんどくさいな、、と思いつつ、ギルドカードを渡した。
周囲からは、あの女、命知らずだな、といった声が聞こえる。
まあいつものことだ。
「はい、えっと、Sランクのクライム様ですね。どなたとですか?」
まじか、死神なら大丈夫だろうな、といった周囲の声が聞こえる。
悪いけど、その声、聞こえてますよ。
誰が死神ですって?え?と言いたいところだが、面倒くさいので放っておこう。
私は、どうやらあまりにも魔物をポンポンと早く倒すことができるので、死神、といったあだ名がつけられてしまっているのです。
全く、私のかわいらしい見た目のどこをどう見たら死神に見えるんだか。
「ソロです。」
「へっ?」
ギルド職員は少し驚いた顔をした。
「いえ、さすがにクライム様でもソロはいささか___、」
職員は今までの
「いえ、やっぱり、あなたなら大丈夫でしょう。」
と言った。
それはそうだろう。
今まで私は、たった一人でAランク冒険者が4、5人集まらないと倒せないレッドドラゴンや、巨人、巨大クラーケンなどを倒したことがあるのだ。まあ全部、
ギルド職員は、手続きを済ませると、
「本当に、気を付けて行ってらっしゃいませ。」
と、少しだけ不安そうな顔で言った。
「うん。」
私はそう言って、ギルドを出た。
「さて、面倒くさいけど、私の平和ライフを
私はそう呟いて、のびをした。
賞金10000000リン。日本円で約10憶円。大金だよ。
手に入れたら一生遊んで暮らせるんじゃないかな?
前世だったら平凡な人間だった私では絶対にもらえなかった金額だよ。
転生させてくれた神様ありがとう。
『転移』
私はスキルを使って、魔王城の魔王の目の前に転移した。
「___は?」
魔王が驚いた様子でこちらを見ている。
「きっ、貴様!どうやってこの城に入った!?結界がはってあるのだぞ!?」
「へー、そんなのあるんだ。そんなもの、意味ないんだけど。」
「うっ、嘘だ!?嘘だ嘘だ嘘だ!だっ、だって、千年生きた魔人がはった結界だぞ!?そうっやすやすとっ破れる代物ではないわっ!」
「あはっ、大いなる力を前に、時も努力も意味を持たないんだよ。馬鹿が。」
これは、あの時私があのお方に言われた言葉だ。
言う側だと、爽快な気分になるな。
魔王、青ざめてるけど。
そしてその言葉に私は、
「君、何千年も生きているのにそんなこともわからないの?馬鹿だねえ。」
と、付け加えた。
「そっ、そんな馬鹿なっ、そんなことがっ、あっていいものか!! そんなことがあったら__」
――誰も、努力しなくなるではないか。
きっとそう言いたいんだろうな。
「私は、努力は無意味だとは言っていない。中途半端な努力は大きな力の前には意味を持たないと、そう言っているんだ。さて、もういいかい?無知な君にかまってあげるほど私は暇ではないんだ。」
私はそう言って、
『
と、唱えてスキルを発動し、時間を止めた。
そして、腰につけていた重く、きらびやかな剣をぬき、振り下ろして、魔王を殺した。
『グシャッ』
血肉がつぶれていく、とても、とてもいい音が鳴った。
思わず、わたしは恍惚とした笑みをうかべて、
「ああ、なんていい音なんだろう。」
と、つぶやいてしまった。
「いい音を聞かせてくれてありがとう。魔王。君の生は私を喜ばせるためだけにあったようだ。」
と、私は言って、
『
と、唱えて時間を再び動かした。
魔王がはらはらと、塵になって消えていく。
そして、その消えた後に、一つの美しい宇宙を現したかのような深い藍色の魔石が現れた。
「魔王にも核ってあるんだ。」
一応魔に属する者だから、かな?
まあ、これ売ったら高い値で売れそうだし持って帰るか。
そう思い、私はそれを拾って、ポケットに入れた。
そして、
「さようなら。」
と言って、私はその場を去った。
――――
「倒してきたよ。」
私は、冒険者ギルドの受付カウンターの位置に転移し、魔王を討伐したことを報告した。
「はえ__?」
職員が驚いたような顔をして、そう言った。
「魔王、倒してきたよって。これ、証拠の魔石。」
私はそう言って、先ほどポケットに入れた魔石を見せた。
「___、本当ですか?」
職員は、そういいつつ、その魔石を手にもって観察し、
「____、伝説のものと一緒だ。。。」
と、言って驚いていた。
「クライム様のことを疑うわけではありませんが、念のため、観察系のスキルを持っている方にも見てもらうので、後日、賞金を渡す、ということでよろしいでしょうか?」
「うん、いいよ。」
私はそう言った。
疲れたな。
帰ろ。
私はそう思い、
『転移』
と、呟いて家の自分の部屋に戻った。
「はー、疲れた。明日学校か。疲れちゃった。」
「お嬢様、お茶の用意ができました。」
メイドがそう言った。
「あらそう、今から支度が出来次第、行くわ。」
そう言って、私は今まで来ていたフードを下ろし、いつものふわふわのドレスに着替える。
さて、読者の皆さんに改めて自己紹介しましょう。
私の名前はフィリス・レイジー。
この国の宰相である、クロウ・レイジーの一人娘。
由緒正しき、レイジー家の長女である。
そして、先ほどまでギルドにいて魔王を倒したりしていた時の名前はクライム。
いわゆる偽名、というやつであるため、ギルドの職員たちは私の身分を知らない。
そして、ギルドでは普段の性格と正反対の怠惰で面倒くさがり屋を演じている。
そして、この世界は乙女ゲームの世界。
私はその乙女ゲームに出てくる悪役令嬢である。
何でそんなことを知っているのか―――それは、私がこの世界に転生した転生者だからである。
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