第3話 お酒を飲めばお友だち

「俺らはダチの仇を打たないと村へは戻れないんだ」

「両手を頭の上。跪いて。近づいたら撃つからね。そもそも巻き込まれたのはこっちよ。村に戻らなきゃいいじゃない。誰の手下か知らないけど、畑を耕さないで、夜な夜な酒場に出てきて酔っ払って銃で遊ぶというのはそういうことなのよ」

 ロペは人質を盾に離れた。この手にしている誰のものかわからない拳銃も信頼できたものでもない。

「ここから追いかけてこなければ撃たないわ」

 指笛を鳴らすと、相棒のラバがトコトコとやって来た。しっかりと逃げているところは賢い。こいつは主を捨てても逃げきるはずだ。

「この子にも手は出さないでね」

「俺たちはどうすればいい」

「あっち向きなさい。早く。道から離れたら撃つからね。ここから村まで競争よ。合図してやる」

 三、二、一、引き金を引いたところ情けない不発の音がした。撃鉄を起こして二発目も不発。

「バンッ。走れ走れ」

 三発目はやけくそで走る背中へと撃つと、一人が足を引きずった。

「撃たねえんじゃねえのか」

「ごめんね!」

 ラバに怪我はないか調べてから街で売るために連中が落とした銃を拾い集めかけたとかき、地面に矢が突き刺さった。これは勝てそうにない。森の木々の枝に立ち、木の仮面にムシロをかぶった人々がロペに向いて矢を継がえていた。さっきまで勢いよく逃げていた少年たちは森の入口付近で次々と倒れた。

「追い剥ぎなの?」

「おまえはよそ者だ。殺しはしない。今すぐ出ていくがいい」

「あの子たちは?」

「カネになる。村へ売る」

「買い戻されるの?」

「おまえが気にすることではないが教えてやる。買い戻されなら肥料になる。豚の餌、豚の糞、畑の肥料として村へ帰る。一年くらいでな」

「銃は?」

「鍋になる。シンプルに売る」

「納得だわ。すぐに森を出るから撃たないで。走らされると的にされそうで不安になるわ」

「ゆっくり行くといい。我々は盗賊ではない。奴らに奪われた土地を奪い返したい。戦争のせいですべてが変わろうとしていると思わないか」

「もう変わろうとしている?もう変わったわ。話してもしようがないけど、わたしは親が殺された」

「そうか。仇討ちはしないのか」

「殺したい奴はいる。でもあなたたちみたいに目の前にはいない」

「幸せなのかもな」

「そうね」

 ラバの手綱を引いて森を出るまで気が気ではなかったが、相手は約束を守ってくれたようだ。いずれ森ごと焼き払われるのではないかなど考えながらも、ひとまず次の街まで行くことにした。途中、駅があったのでラバを横木に留めて、軽く食べようと食堂へと入った。カウンターの隅に腰を掛けてシチューをつまみに蒸留酒を飲んでいると、いろいろな噂話の中、この向こうにいる森の戦士のことがあった。ついでに村の銃撃戦の話も聞こえてきた。

「一杯ずつ」

 常連ぽい商人たちに蒸留酒を一杯ずつ出してくれと頼んだ。

「お、悪いね」

「こんなおっさんのどこに興味あるのかわかんねえけど、いただくよ」

「森の戦士のこと教えて。さっき通ってきたの。仮面をかぶった弓矢の連中に出くわしてね」

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