ガン・ファンタジア 魔法世界の賞金稼ぎ
henopon
第1話 撃ち合いはお好き?
しかし昨夜の酒場はひどかったなと思い返した。酒もほどほどにたしなむロペだが、突然、撃ち合いに巻き込まれるとは想定もしていなかった。というか、きな臭いなと思いながら歩いていたが、まさか三軒のうちの一軒にビンゴするとは。別の酒場を選んでおけばよかった。さっさと逃げようにも応援に駆けつけた一団が表から集まってきたので、酒場内と押し込まれるように逃げるしかなく、とっさに正面のバーカウンターの裏へ飛び込んだ。
「入ってくるなよ」髭の店主がショットガンを突きつけてきた。
「わたしは旅の客だ」
旅の革のバッグを見せた。
「何だよ、これ」
「てめえ女か」
「男に見えるの?このナイスバディのレイディが」
「拳銃持ってるじゃねえか」
「わたしに触れたらヤケドするわよ」
「バカしか集まらんのか。どうしてうちでしてくれるかね。よそでやれよ」
「おじさん、追い払えばいくらくれる。わたしはバウンティハンターでもある。ほれ、帝都の許可証よ」
「責務だろうが」
「保安官に頼みな」
「保安官は隣町にしかいねえ。腕は確かなのか」
ロペのために長さまでカスタムされたリボルバーを抜いて見せた。四インチ少しの長さで跳ね上がるのを防ぐために重くした銃身には翼が彫られ、天使の銃とも言われている。
「銃が立派でも腕がな」
「そりゃそうよね。誰を狙えばいいのか教えて。やってあげるわ」
銃身を折ると、一発ずつ六発の弾を装填しながらマスターの指差す男を見た。まだ若い。自分と同じか下くらいだろうと安らかにと祈る。
「魔法弾か」
「他に何があるのよ」
薬莢内に魔法が封じ込められていて、撃鉄のショックで詰め込まれた魔法が弾丸を飛ばすという仕組みになっている。この魔法というものが得体の知れないもので、クオリティは製造した魔法使いによる。三流魔法使いの弾を掴まされたときにはまったく撃てない方がマシだと思うことがある。まっすぐ飛んでくれないし、飛んでくれればマシで連続して空撃ちなんて日にはマヌケな死に方になる。幸いにも自分はなったことがないが、決闘なんかで死んだ日には神様も笑い転げるはずだ。
ロペはカウンター内を奥まで行くと、撃鉄を起こした。若いチンピラが倒したテーブルから頭を出した瞬間に引き金を引くと、脳天が飛び散った。これまでの連中の銃撃が玩具のように思えるほどの衝撃波がグラスを響かせた。
「てめえ!」
「え!?」
一斉に銃口が向けられ、外套を天井に向けて放り投げると、五発を命中させた。排莢して、再び六発を装填する。窓の外の敵も撃ち殺した。薄暗いランプの下、心許ない六発を装填した後、自分のものを使う必要などないので、銃をホルスターに入れた。チンピラの手にある拳銃を拾い上げて静かになった店を見渡した。
「おっさん、三シルベルだ。ざっと六人くらいだ」
「てめえ殺してどうする!」
「は?」
「身内同士だぞ」
「知らないわよ。追い払えと言ったのはおっさんでしょうが」
「ここで脳みそぶちまけて倒れてるのが走って出ていくのか?」
「とにかく三シルベルよ。払わないんならおっさんの脳みそもぶちまけることなる」
「二シルベルだ」
「ったく」
二枚の銀貨をふんだくると、ロペは死体の転がる店を後にした。こんなところで飲めない。結局初めにパスした小さくて暇そうな店で飲むことにして、ここの何の肉かわからないシチューが絶品で、二階に宿まであるということで、初めからここにしとけばよかったと後悔した。
次の街へ急ぐ。
賞金首が待っている。
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