私には子供はいない。



家に入って、ギュッとスカートを握りしめた。

三木との結婚は・・・出来ちゃった婚だった。


あの人の子供を???

本当・・・・私ってバカだって思った。

付き合ってもいない・・・あの人の子。


それは三木の狙い通り・・・・私は三木のシナリオ通りに・・・動いてしまったの。


子供が出来たと分かって直ぐ、不安になった。


私には親も姉妹もいない・・・。


私が小学校1年の時に亡くなったと聞かされている。


身寄りが無い私は親戚の家で中学まで育ててもらいその後はその家を出た。


だから・・・誰も頼れる人はいなかった。


あの時は・・・三木しかいないって思ったの。



きっと結婚して母親と父親になったら三木に対する思いも変わる・・・

きっと幸せになれると信じていた。



でも・・・無残にも子供は私の元から直ぐに去って行った。


稽留流産だった・・・。





梅雨が終わって夏真っ盛りのこの時期。


近所には夏休みに入った子供たちが元気に遊ぶ声や・・・・家族で出掛ける姿。


独身時代はそんなの気にもならなかったけど最近はそんな光景がやたら気になったりした。


三木は今もカメラマンの仕事をしていて、普段は事務所に寝泊まりすることも多いし最近は出張が多い。


私は日傘をさしてエコバック片手に近くのスーパーに向かった。


はぁ・・・。


夏かー・・・。


私も何処かに・・・行きたいな。


東京の空にも大きな入道雲が見える。



そんな大きな大きな雲を見たり・・・真っ青な空を見ると・・・・・


なんか懐かしくも感じるの。


たまに頭によぎる・・・・

子供の頃の記憶・・・・。


小さい頃見た・・・大きな大きな入道雲・・・・


多分そこには・・・。


真っ青な・・・。


海があった・・・。





スーパーで買い物を済ませ冷蔵庫に食材を終った。


子供か。

今の生活を続けていたら・・・・きっと出来ない。


三木に連絡????


仕事中はラインも電話もしないよう言われている。


帰る時は大体2時間くらい前にラインが来る・・・。


こんなの・・・・夫婦って言えるのかな???


バンッ・・・と冷蔵庫を閉め・・・幸せの象徴だと思っていた大きなアイランドキッチンに手をついた。


こんなの幸せではない。


大きな家にいつも一人。


食事も・・・寝るのも一人。


こんなの絶対嫌だ!!



いつもならちゃんと終うバックや、終った洗濯物も畳まず2階の自分の部屋に行きクローゼットを開けた。


こんな家・・・・。


こんな家に居たくない!!!


急いで、クローゼットから出したワンピースに着替え・・・下に降り化粧をちゃんとして髪を編みこんでアップにした。


スマホと財布をバックに入れて、時間はまだ早かったけど慌てて家を出た・・・。



すると、


「三木さんの奥さんーーー」


家を出るとまた隣の奥さん・・・・。


その周りには同じ40代か30代後半の奥さんが3人と・・・その周りには小学生の子供たちがキャーキャー言いながら走り回っていた。



「あ・・・こんにちは・・・。」


他の奥さんたちにそう言って頭を下げると・・・奥さんたちは笑った。


「お洒落してお出かけーー???いいなぁ、子供居ないと自由な時間がいっぱいあってーー・・・」


・・・・・//////


「三木さんまだ若いからーーー・・ね??これからよねぇ」


・・・・・。


勝手に色々言って盛り上がってる近所の奥さんたち。


「主人が忙しいし・・・・・・・まだ・・・2人で楽しもうと思っているので・・・」


苦しい言い訳だった。


本当にそうならいい。


でも・・・2人で楽しむ


・・・相手もいない。



「そんな事言ってたらぁ~、すーーぐ30代よ!!早いとこ作って早く成人させちゃったほうが楽だってーーー!!」


・・・・・。


「そうですね・・・・・」



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